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0.5ミリ

0.5ミリ監督:安藤桃子/有楽町スバル座/
★4(80点)本家公式サイト

この安藤サクラは老人の夢。大天使。ガブリエル・サクラ。マグダラのマリアかもしれないけど。こんな話を書ける安藤桃子は詐欺師になれるよ。
二流俳優と三流エッセイストの間に生まれた一流女優、鳶が産んだ鷹でおなじみ安藤サクラの女っぷりをウヒウヒ楽しむ映画。いや、しかしね、それだけじゃないんですよ。

まず話が面白い。そして、安藤サクラが演じるキャラクターの造詣が素晴らしい。
ベタベタしない、媚びない、威張らない、恩着せがましくない、裏切らない。理想的な人間像ですよ。端的に言えば「平等な人間関係」。
しかも、男のプライドを上手にくすぐるというか、面子を潰すようなことはしない。例えば、津川雅彦演じる“先生”が、勉強会と称してデパートで暇つぶししていることを知りながら決して口にしないんです。
逆に、男の首根っこ捕まえる時はわざとプライドを傷つける方向に持っていくんですね。
世間体を気にする津川雅彦には近所に吹聴することで脅し(?)、小市民の坂田利夫には警察をチラつかせて脅す。
ヤクザのベンガルには「お前、アソコ小さいんだろ」とプライドを傷つけることを明確に意図した罵倒をする。
これだけ男のプライドを掌で転がせる安藤桃子は詐欺師になれるよ。

映画としての描写も秀逸で、例えば最初の頃、安藤サクラが食堂だかフードコートだかでうどんを食ってる夕食シーン一つで、彼女の空虚なプライベートを押さえてしまう。
さらに、カラオケボックスで出会った老人からもらったコートをずっと着てるんですね。
これは「華美な装飾や豪華な生活を望むキャラクターではない」「つまり詐欺目的ではない」という記号化なんだと思うんです。もっと深読みするなら、その後の老人たちから合わせて最低限の衣食住を与えられればいいキャラクターということかもしれません。ま、いすゞ117クーペをもらうけどね。

というわけで、話も映画的表現も役者も面白く、長尺も全然飽きない映画だったのですが、戦争の話辺りからちょっと説教臭くなる。
とうとうジェンダー的な話になるに至っては「あーあ」って感じに思えちゃう。
いや、分かるんですよ。
老人話ばかりじゃ未来がないからね。どこかで未来に目を向けるオチに持っていきたいという意図はよく分かる。ただそれが、安藤桃子の介護体験を生かした前半ほど消化できていない。理屈が先行した展開に見えちゃう。
途中までメッチャ面白かったのにもったいない。

2014年11月8日公開(2013年 日)

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