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事件

監督:野村芳太郎/新文芸座/★4(72点)本家

丹波哲郎、今回はスーパー弁護士。

弁護士・丹波哲郎に検事・芦田伸介、裁判長・佐分利信というキャスティングが衝撃。
母親・乙羽信子に娘姉妹が松坂慶子と大竹しのぶという強烈さ。
証言台に立つのが西村晃に渡瀬恒彦、極めつけがモリシゲって圧倒的。
冒頭、野村芳太郎お得意の“超望遠”で事件現場を映すんですが、この当時、ヘリコプターからあの望遠撮影はすごく大変なことだったと思うんです。オープニングも衝撃的ですよ。

この5年前に『日本沈没』でスーパー総理大臣をやった日本のチャールトン・ヘストン=丹波哲郎に至っては、「知り合いに頼まれて受けただけの弁護士」とは思えないスーパー弁護っぷりを発揮するのです。これはもう“台詞を入れてこないでその場で演技する”丹波哲郎そのままなのです。

丹波哲郎と芦田伸介の丁々発止を佐分利信がいなすという抜群に面白い法廷劇なんですが、事件そのものには少々“時代”を感じざるを得ないというのが正直な感想です(2014年鑑賞)。

大岡昇平の原作は読んでいませんが、もっと“土着性”が強いんじゃないかと勝手に推測するのです。
事件解決に奔走する山本圭演じる学校の先生に対する同僚の反応。乙羽信子の家庭に対する近隣(佐野浅夫)の口さがない噂話。この土地を出たいのに結局舞い戻ってしまう松坂慶子。この土地を出たい永島敏行と大竹しのぶ・・・。

これ、厚木辺り(だったかな?平塚だったかな?海老名?)じゃなくて、横浜が舞台だったら、全然違う印象だったと思うんです。上手く言えませんが、「都会の若者の凶暴性」「今時の若者は分からん」的な印象になったんじゃないかと。人里離れたド田舎でも、また別の印象になったでしょう。

映画は1978年制作ですが、原作は1961年連載だそうです。原作の舞台設定が同じかどうか分かりませんけど、80年代くらいまでは「都会に近い田舎」ってのがゴロゴロあった。むしろ都会は“近くて遠い、遠くて近い”存在。今や厚木は立派な都会ですが、そういう街がほとんどだった。

そう考えると、東京オリンピックとバブルってのは、“都会との距離感”を大きく変えたと思うのです。前者はインフラ整備による物理的な距離を縮め、後者は都会文化の流入で(東京のお店が多く出店したりで)「この街でも東京で同じ物が買える」といった精神的な距離が縮まった。
そういう時代になると「駆け落ち」という発想は出てこない。広い世界は身近にあるのだから、“この街”を出るために必死になる必要はない。そして“この街”に独り残されることを儚む必要もない。
いや、それ以前に、“都会の匂いのする年上の女”に憧れることもなく、“都会の汚れを知らない年下の男”に執着することもなかったかもしれない。

この映画には、時代を超えた普遍性はほとんどないと思うのです。
滅法面白い映画なのですが、それはあの時代の空気感が分かる者までのような気がします。

(1978年 松竹)

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