『ゴジラ』や『あずみ』など、有名作や原作物の世界観をぶち壊す、もとい、台無しにする、もとい、リ・ボーンすることで定評のある北村龍平監督。『ルパン』でもその才能を遺憾なく発揮します。
かの傑作『ゴジラ FINAL WARS』で、ゴジラそっちのけでTOKIOの松岡君に肉弾戦をやらせた手腕は健在で、ルパン一味は考えることを特別ゲストに任せ(お前ら誰だよ?)、知恵を一切使わず延々銃撃戦と殴り合いで正面突破します。「盗みの美学」なんて関係ありません。銃撃戦と肉弾戦だけが北村監督の“美学”なのです。
また、アクション映画の天才である北村監督は、アップを多用し、役者がどこで何をしてるんだか分からない映像で、役者のアクションを補完します。
さらに、彼の美学に合わない箇所、要するにアクションシーン以外は、グダグダゴチャゴチャ、もとい、子供にも分かりやすいように、全部台詞で処理します。絵で見せるとか小粋な台詞で描写するとか、そういう小難しいことは一切しません。
さらにさらに、1画面に1つの情報しか盛り込みません。無駄に、もとい、丁寧に細かくカットを割って、人物の立ち位置が分からなくなるほど、一人ひとりを一人ひとり画面に収めるのです。時折気が向いたら引きの絵を挿入しますが、カメラがパンしたり移動したりはしません。でも、無駄にピン送りはするんだよなあ。それがカッコいいと思ってるんだろうなあ。もとい、カッコいい画面作りに専心しているのです。
いいですか皆さん、「ルパン三世」だと思うから腹が立つんです。
一度「ルパン三世」だということを忘れて、素直に映画を観てごらんなさい。
ただ頭が悪いだけの映画だから。(<どうすりゃいいんだよ)
マイケルだか何だかいう輩はルパンには無い魅力があるそうで、二人がタッグを組んだら互いに補完し合って超無敵らしいのですが、結局二人がタッグでやったことと言えば、「いっせーのせ」で扉をぶち破ったことと、「いっせーのせ」で鍵を回したことだけ。素晴らしく頭の悪い映画で、北村龍平らしさ全開の“穴ボコ映画”で楽しめます。
そうは言いながらこの映画、世間で酷評されるほどヒドい出来でもないのです。
しかし、それが逆にこの映画の欠点でもあるのです。
目黒祐樹の『念力珍作戦』くらい珍作だったら(観てないんだけど)、後世に語り継がれる映画となったでしょう。
しかし残念がらこの映画は珍作の域に達していません。
ソコソコの出来の結果、ただの凡庸な映画なのです。
余談
「NO MORE 映画泥棒」とのコラボはDVD特典に入れるべきだね。
2014年8月30日公開(2014年 TBS)
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