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小さいおうち

小さいおうち監督:山田洋次/吉祥寺バウスシアター/
★3(55点)本家公式サイト

良くも悪くも年寄り目線の映画。山田洋次がハッキリと口に出して言った内容には共感する。
祝!はるちゃんベルリン銀熊賞。ちょうどこの映画を観た2日後。岩井俊二映画祭でさんざん観ていた女優で、若いのにしっかりしてるなあと思っていたらアレヨアレヨと売れっ子に。これからもっといい女優になって欲しいですな。もっとも、山田洋次は『東京家族』の蒼井優先生と似たような扱いですけど。ああ、あと、綾野剛と共演の売りに騙されて『シャニダールの花』とか観ると痛い目に合うからね。

さてこの映画、山田洋次らしからぬ「手持ちカメラ・ワンカット長回し」をやるんですが、このシーンは後々重要であることが明かされます。誰にとって重要だったかというと、それは数十年後の倍賞千恵子にとって重要な出来事なんですね。
この映画、松たか子の物語、あるいは恋愛物として捉えると全然面白くない。ドキドキをとうに忘れたお爺さんの作品ですから、艶っぽくもなければトキメキもない。
しかし、先に述べたように、お婆さんの物語として捉えると実に興味深いものがあるのです。

その昔、山田洋次は「どこかで戦争体験を描かねばならない」と語っていた。その時は「自分の中で機が熟していない」と言っていたが、『母べえ』で初めて戦争を描き、この『小さいおうち』はその延長線上にあるのだと思う。

要するにこの映画は、恋愛物などではなく、山田洋次が、戦前あるいは戦時下の日本の空気を映像に残そうとした映画なのです(山田洋次自身はこの映画の「ボッチャン」くらいの年齢ですが)。
アイロンを扱うシーンなどは典型的な例で、「水を口に含んで霧吹きにしたんですよ」「電源は電球からとってたんですよ」ということを描くためのシーン。

さらに言えば、いつまでも若造扱いブッキーに「戦争中にトンカツなんか食えるわけないでしょ。ダメだよ嘘書いちゃ」などと言わせることで、「今時の人はまるで分かってない」描写をし、現代人の単純な時代認識(戦争に対する認識)を批判するのです。

主人公たちは時代の流れを川岸で見ている人に置きながら、当時の国民ほとんどが戦争を支持していたことを描写し(ついでに言うならセクハラ発言なんかもバンバン飛び交い)、対岸の火事では済まなくなったことで、戦争の、というか、時代の空気の恐ろしさを描くのです。

そしてとうとう、「この国は不本意な選択をした」「不本意な選択をしたことにすら気付かない愚民どもがゴロゴロいる」「日本の不幸は自分達が引き寄せたんだよ、このうすら馬鹿」と、ハッキリと口に出して言うのです(<そこまで言ってない)。

私は、この山田洋次の主張に共感する。
ただ、松たか子の恋愛物が始まるまで物語が動かないし、物語が動き出したところで、先に述べたように年寄りが描くからワクワクしない。ぶっちゃけ、映画としては面白くない。

余談

橋爪功が「女性からの手紙をそっと隠してくれてね、夫婦円満も女中次第」なんてことを言って、女中の仕事と人権を尊重してるんですね。これを観て私は、我々が思うほど虐げられてたわけでもないのかもしれないと素直に思ったんですね。ま、一部の知識人家庭だけかもしれないけど。これ、育ちの悪い橋田壽賀子だとこうは描かないよなぁ、とか。
しかしこの橋爪功のクダリ、よくよく考えてみたら、前述した「手持ちカメラ・ワンカット長回し」の伏線だったんだわ。今頃気付いたよ。

余談2

年寄り年寄り言ってますが、山田洋次はまだまだ作品を撮り続けられます。映画を観れば分かります。
新藤兼人や若松孝二の遺作は、最初から棺桶に片足突っ込んだような出来だったもん。

2014年1月25日公開(2013年 松竹)

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