白黒無声映画で、「白雪姫」をモチーフにした映画。
こう書くと何やら難しげだが、普通に楽しめる。
この映画の好きな所は、「ダークファンタジー」というウリ文句が正しいのかどうか分からないが、変に「実話に基づいた」なんて流行りを全然無視したガッツリフィクションであること。そしてその表現手法として、モノクロ無声映画という手法を選択したこと。この選択は悪くない。
極力少ない台詞で、とにかく「映像で語る」ことに徹している。それは、最近流行りの(特にアニメに多い)台詞処理に逆行して(最近やたら語りたがる作品が多い気がする)、映画本来のあるべき姿だと思う。
しかしその一方で、技術の進歩とともに音声が付き、カラーになった映画は、その分情報量が多いんだということも再認識できる。
普通に面白い映画ではあるんだけど、何か物足らない。
それは何かと考えると、「いいシーン」というのが思い当たらない。よく考えられた演出でいい“ショット”は多くあるんだけど、心に迫るシーンがない。
心に迫るいい“シーン”って(少なくとも私が思うに)必ずしも“計算”だけでは生まれないのだと思う。
そこには役者の発声や微妙な台詞の間、息遣い、何気ない仕草、光に反射する背景の色合い等から生まれる映画的情景、そうしたいろんなものが偶発的に重なって生まれるものなんじゃないだろうか。
なんか、そんなことを思う映画だった。いや、普通に面白いんスよ。
日本公開2013年12月7日(2012年 スペイン=仏)
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