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ゼロ・グラビティ

ゼロ・グラビティ監督:アルフォンソ・キュアロン/渋谷TOEI/★5(90点)本家公式サイト

それでも地球は美しい。それでも人は生きていく。
その長回しが特徴的なアルフォンソ・キュアロンですが、「死の匂いがする映画」というのも彼の特徴だろうと私は思っています。“死の淵”映画と言ってもいい。
私は『天国の口、終りの楽園。』の印象が強く、メキシコ人らしいかどうかは分かりませんが、少なくともアメリカ(ハリウッド)っぽくない。この人の映画は、ハリウッド的な上っ面でなく、真摯な“生”に対する問いかけがある。

そう考えると、主人公であるサンドラ・ブロックが娘を亡くしたというエピソードは重要だと思うのです。
つまり彼女は“死”を身近に感じたことがあるわけです。おそらく、彼女が“死の淵”に立って孤独と絶望を前にした時、「娘も同じ思いを味わったのだ」という思いがあったでしょう。この映画のサンドラ・ブロックの演技が高く評価されている理由は、単に体を張った演技だったというだけでなく、こうした“背景”が表現されていたからではないでしょうか。

そして「亡き娘」のエピソードでもう一つ重要なのは、娘以外で家族の匂いがしない点。もう少し過剰な言い方をすると、地球上にあまり未練がない。「地球に帰る希望」が希薄。
よくあるパターンとしては、「この戦争が終わって帰国したら彼女にプロポーズするんだ」的なことを言って結局死んじゃう「果たされない未来」というのがあるのですが、いわばこの映画はその逆。
彼女には、どうしても帰還しなければならない強い動機や希望といった「明るい未来」はないのですが、「それでも生きる」選択をするのです。
この映画には、「それでも生きる」「それでも人は生きていかねばならない」という強いメッセージがあるように思えるのです。そこも含めて“死の淵”を覗く映画として高尚で、それ故感動的なのでしょう。

これでもか!と怒涛のように押し寄せる苦難の中、地球は悠然と美しい姿を見せます。
そして、その美しい地球に命からがら到着した彼女は、生命の象徴でもある“水”の中でもがき、地表に這い上がり、自らの(弱った)足で“大地”に立つのです。誰の力も借りずに。
人は皆、孤独と絶望に直面するし、明るい未来は見えないかもしれないけど、「それでも自分の足で立って、生き続けねばならない」。これはそういう映画だと思うのです。

日本公開2013年12月13日(2013年 米)

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