違う意味で「見たことない映像」が結構あって驚く。死刑囚との面会で、刑務官っていうの?あの人がやたら見切れるんです。カリカリ筆記する音もうるさいしね。何か意味があるのかと思ったら、どうやら演出が下手なだけらしい。
裁判シーンも同様。やたら傍聴人が目立つんだ。
それがこの映画を象徴しているというと大げさだが、映画全体のピントがボケている気がする。
要するに『冷たい熱帯魚』なのか『ゾディアック』なのか。
『冷たい熱帯魚』は犯罪に巻き込まれた人間の異常心理に焦点が当てられていた。
『ゾディアック』は犯罪を追求する人間が、その犯罪に魅入られていく様に焦点が当てられていた。
こう書くとこの映画は『ゾディアック』寄りなのだが、印象は『冷たい熱帯魚』なのだ。
勝手な推測だが、作り手は『冷たい熱帯魚』寄りの映画を作りたかったんじゃないかと思う。しかし、ストーリーテリングの都合で「記者が解明する」という設定にした上に、記者の家庭の事情を中途半端に挟んだもんだから、焦点がボケちゃったように思う。
もっと言えば、「山田孝之演じる記者と奥さん演じる池脇千鶴も、一歩間違ったら爺さん殺害を依頼した家族に陥ったかもよ」「それくらい犯罪って紙一重かもよ」ってことなら、あの家族をもっと突き詰めて描写すべきだったと思う。
しかしどこかで、「犯罪者の魅力」を描きたがっている。要するに『冷たい熱帯魚』のでんでんだ。それならば、記者は「語り部」に徹するべきだったと思う。
いやもうそれ以前に、演出がダレダレで観ててダレるんだよ。
無頼鮨の大将がとてもいいという評判だっただけに残念だ。
2013年9月21日公開(2013年 日)
comments