20年ぶりくらいに再鑑賞して泣く。実に素晴らしい映画。
「マニアの間では“ゾンビ様”と言うらしい」と今までコメントしていたけど、俺が“ゾンビ様”と呼ぶよ。
て言うか“ご本尊”。
これ以前にも蘇った死者が出てくる映画はあったかもしれないけど、それはこのご本尊『ゾンビ』様が世界的大ヒットしてから発掘・再評価されたにすぎないからね。言わば有史以前。紀元前。『ゾンビ』前。
元祖『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』だって日本じゃビデオスルーだから。ま、ダリオ・アルジェントが見出したおかげではあるんだけど。
この映画の持つ空気感が好き。アメリカン・ニューシネマ的な“映画的情景”がある。
いやむしろ、アメリカン・ニューシネマの一つとして数えられるべきだと思うんだよね。
どう表現したらいいかな?個人の無力感とか、アメリカという国に向けられた(批判的な)視点とか。ゾンビ狩りに興じる人々の描写で強く感じるんだよね。アメリカン・ニューシネマとしても傑作の部類に入ると思うんだ。
ただねえ、アメリカン・ニューシネマって、1976年で終わりと言われてるんだよね。この年製作の『ロッキー』がアメリカン・ドリームに回帰して、同年製作『タクシードライバー』がその終焉ということになっている。
77年には『スター・ウォーズ』、78年に『未知との遭遇』。これらが大ヒットしたことで、確実に時代が変わったことは分かるでしょ。
『ゾンビ』は78年なんだよなあ。実は、ちょっと時代遅れなんですよ。
あ、そうか。
俺、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』も「映画として10年遅れている」って書いたけど、同じだ。
ロメロって、ちょっと時代遅れの映画しか撮れない人なんだ、きっと。
だからねえ、本人あれやこれややってもホラー監督から脱却できなかったんですよ。
ま、そこも含めて愛おしい映画なんですけどね。
(1978年 米=伊)
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