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リアル〜完全なる首長竜の日〜

リアル
監督:黒沢清/ユナイテッドシネマとしまえん/
★3(60点)本家公式サイト

「完全なる娯楽映画やるぜ!」って黒沢清の意気込みは買う。がんばれ黒沢清!俺はこの映画を推すよ。★3だけど。
私は黒沢清を「この世界は不安定である」ことを描き続ける作家だと思っていて、その根底には、タルコフスキー『ストーカー』の「世界が侵食される恐怖」というものがあると思っている。
そういう意味では、この題材は黒沢清に向いているんだろう。

もっとも、今回は『ストーカー』というより『惑星ソラリス』。
この手の監督はソラリスの題材は好きなはずなんだ。実際、ソダーバーグはリメイクしているし。
そして言うまでもなく、『惑星ソラリス』はタルコフスキーの中で最も“娯楽映画”だよね?ワハハハ。この段階で、黒沢清の娯楽映画に対するやる気を感じるね。ワハハハ。

黒沢清は映画毎に技術的な実験をやったりもする。『アカルイミライ』でワイプを試して『ドッペルゲンガー』で実用化したりとかね。
今回、私の推測では、リアプロジェクションかフロントプロジェクションか、どっちか分からないけど、車を運転している時の背景じゃないかと思っている。ヒッチコック映画でお馴染みのアレね。前から、後ろから、横から、フロントガラス越しに斜め上から、いろんなパターンをやっている。
わざわざこうしてヒッチコックを彷彿とさせるあたりにも黒沢清の娯楽映画に対するやる気を感じるね。ワハハハ。
そして最後は『ジュラシック・パーク』だもんね。ワハハハ。

しかしこの『ジュラシック・パーク』、じゃないや、首長竜、佐藤タケルを死の世界へ引きずり込む、言わば“死神”的な象徴なので、決して綾瀬はるかを攻撃することはない。
このように、黒沢清の映画は“理屈”が伴う。
早々にタケルが(不自然に)水を飲むところから“水”に対するイメージを連続させたり、風がマンガ原稿を吹き飛ばす冒頭や(不自然に)病院内に風が吹くとこで、“風”が現状を変える象徴であったりする。

いや、正しくは、黒沢清はこうした“理屈”を踏まえた上で、“理屈”を超えた何かを映画に求めている。理屈ではない「映画的な瞬間」を常に探している。
彼がホラーを好むのは、恐怖に“理屈”はないからだ。
そして黒沢清は、娯楽映画は、理屈ではなく、観客の“感情”を動かすものだという“理屈”が分かっている。

しかし、しかしだ。
これが黒沢清の悪い癖だと私は思っているのだが、“理屈”と“理屈を超えた何か”を重視するあまり、「登場人物の感情の流れ」が疎かになる。
登場人物の感情の流れが不自然だと、観客は「キョトン?」としてしまう。
この映画で言えば、女医・中谷美紀の行動。特に最後の、患者の体力を無視してセンシング継続の判断は「お前、それでも医者か?」とキョトンとしてしまう。いや、黒沢清的には中谷美紀の髪を揺らす風だけで充分な表現なのだ。

「登場人物の感情の流れ」が自然に感じられないと、観客の感情がついてこない。
これをクリアしない限り、黒沢清に「完全なる娯楽映画」は難しいと思うのですよ。

2013年6月1日公開(2013年 TBS)

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