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天使の分け前

天使の分け前
監督:ケン・ローチ/銀座テアトルシネマ/★4(74点)本家公式サイト

「感動のラスト!」なんて宣伝を鵜呑みにしない方がいい。だってケン・ローチだもん。でも、ベタベタしない「ちょっといい話」。だってケン・ローチだもん。
27年の幕を閉じるという銀座テアトルシネマ最後の上映。
ケン・ローチの映画は、今はなき渋谷シネ・アミューズで何度か観てるので、なんかこう、ケン・ローチがかかる映画館はなくなっちゃうイメージがあるね(<なんてことを言うんだ)。

必要以上に「いい話」が誇張されて宣伝されるもんだから、ちょっと敬遠していた。コメディだという『エリックを探して』(未鑑賞)もあって、ケン・ローチが違う方向に行ってしまったと勝手に思ってた。
でも忘れてたんだ。
いい話だろうがなんだろうが、ケン・ローチはベタベタしない。淡々と、地に足をつけて、しっかり「痛いもの」も見せてくれる。
前作『ルート・アイリッシュ』(これも未鑑賞)みたいなガッツリ社会派(なの?)もいいんだけど、小品もいいんだよ。『やさしくキスをして』とか。

劇中、「親同士が憎しみ合ってたら子供同士も争わにゃならんのか。それをこの子にも受け継ぐのか」的な台詞を、主人公の彼女が言います。
イギリスの格差社会は深刻だそうで、たいがいは親のせいだと言われています。
社会的に成功している親は、自分の成功体験に基いて、「努力しろ」と子供に教えます。下層の親は、自分の失敗体験に基いて、「どうせ努力したって無駄だ」と子供に教えます。簡単に言えばこういうことです。
要するに、どういうわけだかイギリスは根強く親の影響を色濃く受けるそうです(おそらくこれはイギリスに限った話ではないと思うのですが、そもそもの研究結果がイギリスだったと記憶しています)。

で、何が言いたいかというと、社会の下位層に焦点を当て続ける左翼のケン・ローチはこの映画で、「そういう悪循環の連鎖を断ち切ってみようよ」と言っているような気がするのです。

そして、主人公たちは盗みを働くわけですが、搾取される側を描き続けるケン・ローチが、富める者からちょっとだけ「天使の分け前」をもらったっていいじゃないか、と言っているような気もするのです。
恩師へのお礼も含め、「Angels' Share」という言葉の持つ多重的な意味が洒落てる佳作だと思うのです。

余談

この映画でもエピソードとして出てきますが、仕込んでいる間に蒸留所が倒産しちゃったりするほど、ウィスキーは気長な製品なわけです。ケン・ローチがこの映画で言う(と私が勝手に言っている)「連鎖を断つ」ということも、非常に気長なことだと思うのです。
ケン・ローチの映画が単純な善悪二極論を描かないのは、世の中がそう短絡的でないことを分かっているからかもしれません。

余談2

どうでもいい話ですが、スコッチにしろアイリッシュにしろ、蒸留所で味に個性があるというのは日本の酒蔵みたいなもんなんでしょうな。
ただ、日本におけるウィスキーは少し事情が違ってて、日本はブレンド技術が非常に優れているそうなんです。日本人ってウイスキーなら「シングルモルト」、コーヒーなら「ブルーマウンテン」とかをありがたがるフシがあるけど、必ずしもそうじゃないんだってよ。

日本公開2013年4月13日(2012年/英=仏=ベルギー=伊)

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