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ヒッチコック

ヒッチコック
監督:サーシャ・ガヴァシ/TOHOシネマズシャンテ/
★3(66点)本家公式サイト

「熊倉一雄の声じゃないヒッチコックはヒッチコックじゃないやい!」というコメントを用意していたのだが、なかなかどうして、ヒッチ好きの私は終始ニヤニヤ。
冒頭、『北北西に進路を取れ』プレミア上映か何かのシーンで、意図的に雨で始まりますね。
あの並ぶ傘の見下ろしショットは『海外特派員』ですし、ヒッチコックに向けられる執拗なフラッシュは『裏窓』を意識しているのでしょう。
あとヒッチコックってズームを使用しないで(『めまい』ショットを除く)カメラ自体が寄るんだけど(当時の技術的な問題もあるらしいが)、この映画も、基本カメラ自体が動くことをきちんと踏襲している(ピン送りが何度かあったけど)。

ヘレン・ミレン演じる奥さんが浮気してるんじゃないか?って疑念に駆られるでしょ。あれはもう『ダイヤルMを廻せ!』だよね。「電話」もモチーフに使うし。
海辺の別荘は『鳥』であり、その道中は『断崖』でもある。
肩にとまる『鳥』はもちろん、タイトルテロップもソウル・バス風。
ウィットに富んだユーモア、食べ物の使い方もヒッチ映画風。欲を言うなら“階段”が足らないけど。ヒッチ映画は階段を多用するんだ。

これは、ヒッチコックという「人物」を描くために、ヒッチコックの「映画」を調味料とした映画に見える。
江戸川乱歩の「陰獣」みたいなもんだね。エド・ゲインは大江春泥。
まあ、正直、面白いのはそこだけなんだけどねえ。それもヒッチマニアにしか伝わらない。
話自体は薄っぺら。

余談

劇中、映画の倫理規定(ヘイズ・コード)が厳しいという話が出てくるんだけど、当時、裸や血はご法度だったわけです。私も今回初めて、トイレを写すことすら禁じられていたと知りましたが。どうやら『サイコ』が初の「トイレを写した映画」ということになるそうです。
ヒッチ先生は、裸体は上半身のみで実際に刺すことはせずに規定スレスレで殺人シーンを演出したのですが(絵コンテ自体はソウル・バスが描いたらしい)、以前からヘイズ・コードに挑戦していたのです。
当時「キスシーンは1分間以内」と規定されていたそうですが、ヒッチ先生は『汚名』で、くっついたり離れたりしながらチュッチュチュッチュやって、規定の範囲内で5分間のキスシーンをやってのけるのです。『汚名』は1946年。ヘイズ・コードがバリバリ厳しかった頃。『サイコ』は1960年で、その前年1959年にビリー・ワイルダーが『お熱いのがお好き』で“女装”というヘイズ・コードに抵触する題材を検閲を通さずに公開して大ヒットしちゃったもんだから、検閲機関の力がだいぶ弱まった時期ではあったんだけどね。

日本公開2013年4月5日(2012年 FOX)

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