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愛、アムール

愛、アムール
監督:ミヒャエル・ハネケ/ユナイテッド・シネマとしまえん/
★4(75点)本家公式サイト

静かだけれど濃密な時間を堪能できる映画らしい映画。
私は「老人映画」はある種のSFだと思ってます。
青春映画は自分の通ってきた道だから、共感もしやすいし批判もしやすい。
だけど、老人視点の映画は未知の領域だから語りにくい。若者の目を通した老人物ならともかく。
ちなみにウチの夫婦は「ボケた者勝ち」だと思っていて、年寄りになったらいかに先にボケるかを競っています。あるいは二人ともボケて笑い飯になるか。でもたぶん私はツッコミ老人になるでしょう。

そんな与太話はさておき、この映画、1シーン1カット、または僅か数カットで撮られているんですが、この手の長回しはたいがい「長いな」って感じちゃうことが多いんですね。
しかしこの映画は、前後をバッサバッサ切る上に中味が濃密なので長さやしつこさを感じない。
バン!って始まってネットリしてバサッと切るイメージ。何言ってんだか分かんないけど、長回しなのにリズムを感じるほど。
長回しで役者に負う所が多いはずなのに、画面の隅々まで演出が行き届いているように思うし。
映画って、こうあるべきだと思うんだ。静かだけど濃密。映画らしい映画。堪能した。

私はこの映画に、リリアーナ・カヴァーニ『愛の嵐』と同じ臭いを感じた。私の好きな「世界に二人だけ」映画。
主人公の老夫婦以外に二人、実の娘と教え子のピアニストという“外部”の者がこの部屋に入ってくる。言わばこの夫婦が後世に残した者たちだ。
しかし彼らは、この老夫婦の「二人だけの世界」を壊すことも救うこともできない。もちろん老夫婦も彼らに未来を託したりするような真似はしない。
「もっと他の手はなかったのか」と問いただす娘に「じゃあ、お前が引き取るか?老人ホームに入れるか?」と、むしろ“外部”の者を拒否し、頑なに世界の殻を閉ざすのです。

そこへ第三の“外部”からの闖入者が訪れます。鳩です。
老夫婦がこの世に残した者たちが破壊も救済もしない中、鳩だけが「二人だけの世界」を新たなステージに導くのです。その新たなステージが幸か不幸かは観る者に委ねるとして。

日本公開2013年3月9日(2012/仏=独=オーストリア)

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