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東京家族

東京家族監督:山田洋次/渋谷シネパレス/
★1(20点)本家公式サイト

山田洋次の『崖の上のポニョ』。爺さんたち、どんだけ若者を追い込めば気が済むんだ?
母が倒れて、その年齢設定が68歳だと観客に明かされます。吉行和子の実年齢は77歳。実際にはピンピンしている方ですが、映画では実物より老け役を演じます。しかし、その演じている老け役は実年齢より10歳近くも若い。この辺で、ポニョの「人面魚事件」の如くグニャリとしてくるのです。

まあ確かに、吉行和子と大の仲良しだった岸田今日子はポックリ逝きましたけどね。それでも76歳。今時の68歳はもっと元気でシャンとしてるぜ。いつの時代の設定なんだよ、と思ったらスカイツリーとか3.11とか半端にリアルを持ち出してくる。今かよ!
この映画の何が気持ち悪いって、意識的に背景に通行人を多く出すんだけど、誰一人iPodも聞いてなければスマホも使わず、全員が全員シャンと背筋を伸ばして歩いてるの。子供は自転車を乗り回したりラジコンヘリで遊んだりする。DSとかプレステじゃねーのかよっ。いつの時代設定だよ。今かよっ!『お早よう』だって、テレビ買ってくれー買ってくれー言うとったぞ。

話が横道に逸れたついでに、岸田今日子は『秋刀魚の味』に出てたよね。バーのママで、「死んだ母さんに似てる」の何のってクダリをやるんだけど、小林稔侍と風吹ジュンのクダリはそのパロディーなのかなぁ?我が家で風吹ジュンは“いい女優”格なんだけど、最近ドラマなんかじゃ「そんな役キムラ緑子でええんちゃうんか?」的な雑な扱いが多くて、「風吹ジュンを無駄遣いするなキャンペーン」真っ最中だったところ、今回も雑な扱いで腹が立った。キムラ緑子でよかっただろ。

さらに話は横道に逸れるけど、『夜がまた来る』以来の夏川結衣ファンとしては、こんなヒドい夏川結衣を見たのは初めてだ。
いやまあ、分かるんですよ、小津風に撮ってることは。でも違和感しか残らない。山田太一かと思った。
中嶋朋子だっていい女優さんだと思うけど、相手が杉村春子じゃ気の毒だ。だって『東京物語』の杉村春子は映画史に残すべき最強の杉村春子だからね。
小津風で言うと、最初に中嶋朋子の美容院が登場するシーン、勤めている女性が店に向かう所なんだけど、カメラをパンしないで固定のままフレームインをつなぎ合わせて移動するのね。これ小津の特徴。『麦秋』の冒頭で堪能できるよ。
でもそれは小津らしさであって、山田洋次らしさは違うと思う。
山田洋次の映画は、それぞれのショットにきちんと意味があって、緩急の付け方とかメッチャ巧いのに、小津の真似して平板にしちゃったら、自分の持ち味を全部殺しているようにしか見えない。

というわけで、吉行和子の実年齢の件以降ずっと逸れていた話をやっと元に戻します。

『東京物語』で老夫婦が心を砕くのは、戦死した息子の嫁=血の繋がっていない義理の娘なんです。
ところがこの映画では、実の息子のブッキーに心を砕き、赤の他人の蒼井優先生に犠牲を強いるんですね。
まだ籍も入れていない、心身共に疲れきったボランティア先で一目惚れした程度の、いいように弄ばれていつ捨てられるかも分からない彼女に、やれ金を預かってくれだとか、やれ形見をもらってくれだとか、お前はイイ奴だ、すっげーイイ奴だって言って、ドンドン追い込んでいく。息子の運命はお前にかかっている、くらいの勢いで。
まるで、責任能力のない5歳児を追い込んで地球の存亡を背負わせる『崖の上のポニョ』。
隣に住んでる女の子がすげーいい娘だってのも鼻につく。
「この子はいい子だ」って年寄りが言い出したら、ちょっと危ないと思っていいね。クロサワの『夢』とか。

どうも老人たちは若者に未来を背負わせたいらしい。
俺は、「まだまだ若い者には負けねーぜ」っていう『スペース・カウボーイ』的な爺さんの方が好きだけどね。それも10年も昔の映画か・・・。

『東京物語』は、戦後の復興の中で、新しい時代の波をせわしなく泳ぐ息子や娘と、時代に取り残された老夫婦(と原節子)の対比の物語だった。その行間に「変わっていく時代」が描かれていた。
「私、ずるいんです」いいや、それでもあなたは新しい時代の中で生きていく世代なんですよ、という映画だった。
それを飽食で不況のどんづまりの“今”に置き換えて、何をどうしようと言うんだ?
3.11を持ち出すなら尚更。
右肩上がりの時代も知らず、リアルに世界が崩壊する様を目の当たりにしてしまった世代(=成功体験を知らない世代)には、「未来を託す」より先に「希望を持たせる」ことが大人のやるべき仕事だと思うんだがなあ。

だいたいさあ、みんな東京に出て行ってしまって田舎に戻りたがらない「どこかで日本は間違えた!」って言うけど、山田洋次は高級住宅街の成城に住んでるじゃない。

2013年1月19日公開(2012年 松竹)

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