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恋のロンドン狂騒曲

恋のロンドン狂騒曲監督:ウディ・アレン/新宿武蔵野館/★3(66点)本家公式サイト

的はずれなくだらない邦題を忘れろ!これは軽妙洒脱な恋愛劇なんかじゃない。ぶっちゃけダークだ。
2010年制作で日本公開2012年の12月ということは、「値段が下がるまで買い手がつかなかった」典型的なパターン。
アメリカのメジャー大作がハズレ、低予算映画のヒットが増えた影響・・・なのかどうか知らないが、世界的に映画の販売価格が高騰しているそうだ。しかし日本ではテレビ主導の邦画ばかりヒットし、ミニシアターは続々と潰れるばかり。配給会社は苦戦を強いられ、高額で買い付けても売る先がないし、資金も回収できない。だから、値が下がるまで待った結果、日本公開が遅くなる。そして「売る」ために配給会社がいい加減なタイトルを付ける。日本の映画環境は昭和の時代に戻ってしまった。

この映画の原題を直訳したら「君もTall Dark Strangerに会うだろう」。「恋」も「ロンドン」も「狂騒曲」もどこにもない。
正直“Tall Dark Stranger”が何かは分からない。古いヒット曲のタイトルにはあるらしい。バック・オウエンズだそうだ。「Tall Dark Strangerは危険だ。奴は一瞬にして女性のハートを掴む。奴に用心しろ」といった内容の歌詞のようだ。

本作の原題が、バック・オウエンズの歌から採ったものかどうか知らないが、“Tall Dark Stranger”という響きが決して明るいものではないことは明白だろう。
ウディ・アレンは周到に赤い服の女や白い部屋といった“明るい色”を強調し、「いつ“Dark”が現れるんだろう」と思って観ている者を翻弄する。

考えてみれば、9・11以降、アメリカを離れたウディ・アレンの映画は一貫して「ちょっとした選択肢で人生が変わる」ことを描いてきたように思う。『マッチポイント』で、ネットに当たったテニスボールが向こう側に落ちるかこちら側に落ちるかでゲームの行方が決まるように、人生もまたちょっとしたことで変わってしまう、と。

この映画は選択肢を誤る者達の物語だ。現実世界で生きる登場人物ほぼ全員が不幸になるダークな話だ。唯一、現実とあの世の区別がつかなくなってる老い先短い爺さん婆さんだけがハッピーエンドを迎える。
見方を変えれば、現実の世の中は不幸になるような選択肢ばかり転がっている、と言ってるようにも思える。
この「不幸になる選択肢」が“Tall Dark Stranger”なのかもしれない。

日本公開2012年12月1日(2010年 米=スペイン)

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