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莫逆家族 バクギャクファミーリア

莫逆家族監督:熊切和嘉
★4(87点)本家公式サイト

「宴の後の宴」の物語。それはどうなの?と思う所もあるが、素晴らしく好きなシーンが多すぎる。
「苛立ちとグーパンチを描く作家」と私が評している熊切和嘉。その“グーパンチ”ぶりを遺憾なく発揮。

この映画の難点を先に言ってしまうと、もう一方の彼の特徴である(と私が思っている)“苛立ち”がいまひとつピンとこない。
いや、分かるんだ。分かるんだけどね。仲間ウンヌンが“らしくない”と言うかさ。
今までの映画を観る限り、熊切の持ち味である“苛立ち”は“孤独”と一体なんだと思うんです。
そのせいかどうか分かりませんが、「仲間を救う」主人公より、「仲間の復讐」をする敵役のドラマの方が全然面白いんだ。まあ、役者的なこともあるかもしれないけどね。

鬱屈した三白眼でお馴染み新井浩文はもちろんのこと、UAの元夫・村上淳が素晴らしくいいよね。私の思う村上淳のベストアクトはドラマ「セクシーボイスアンドロボ」第2話「ごぼ蔵」の回だと思ってるんだけど(<誰も知らない)、それ以上だったよ。
あと中村達也の面構えね。北村一輝同様、年齢的な無理はあるけど。いま日本で最高の悪役ヅラだと思うんだ、中村達也。あの顔で睨まれたら悪夢見るよ。本職はドラマーだけどね。BLANKEY JET CITY時代は分からないけど、LOSALIOSは生で見たことがあるよ。めっちゃカッコいいドラム叩くんだ(<誰もわからない上にどうでもいい話)。

よく考えたら、チュートリアル徳井演じる主人公って、実はどのエピソードとも直接的な関わりがないの。
娘ヤラれちゃってるのは阿部サダヲだし、復讐を恐れているわけでもないし、自分の命が狙われてるわけでもないし、視点が突然息子に移ったりする。
事態の中核にいないのに右往左往する主人公ってパターンは無いわけじゃないけど、この話は(キャスティングも含めて)意図的なのかなあ?なんか、主人公を応援する気が起きない。
そもそも青春時代の“宴”の後始末なわけでしょ。その当時からはいろいろ変わってると思うんだ、精神的にも肉体的にも。そういう“変化”もイマイチ描かれているように思えない。

しかしその一方で、素晴らしく好きなシーンが多い。
息子が小洒落たナイフをモタモタ出してる所を親父に蹴り飛ばされるシーンがありますが、あの当時の“族”はナイフじゃなくて「カッター」なのよね。
中村達也の口が裂かれるシーン、新井浩文が自らの頸動脈を掻き切るシーン、最高だよね。スパッと切らずに、カッターでグググッってゆっくり血しぶき飛ばしながら切るところなんか、こんな映画が観たかった!って思うもん。

でね、「言葉以上に雄弁」という語り口がこの映画にはあるのさ。
右側の襟だけ血で汚れたジャンパーなんか“復讐の象徴”として言葉以上に物語るものが多い。
あと、倍賞美津子が徳井の頬を打つシーンなんか、一言も発さなくとも、万感の想いが込もった平手打ちであることが分かるわけですよ。
熊切和嘉は、そうした映画的な情景を活写できる監督だと、あらためて感じるわけです。

2012年9月8日公開(2012年 東映)

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