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ル・アーヴルの靴みがき

ル・アーブル監督:アキ・カウリスマキ/渋谷ユーロスペース/★5(90点)
本家公式サイト

理想的な「善」に満ちた映画。少年の面構えがいい。
あいかわらずシンプルすぎて笑っちゃうほどシンプルな描写。
小津の進化系カウリスマキの原節子ことカティ・オウティネンが重病だ!って描写も、静かに机に伏せるだけ。「ウウッ!」とすら言わない(笑)。
カウリスマキ映画の登場人物たちが常に無表情なのも、余計な情報を表情で伝えないためなのかもしれない。

映画は冒頭、事件から始まる。何がどうなっているのやらサッパリ分からないが、殺人事件が起きる(起きているらしい)。
しかし、この事件はストーリー上直接的な関係はない。
その場に居合わせたが大事件とは無縁の一介の靴磨き=市井の人が主人公であることを提示しているにすぎない。
だが、世間を騒がす事件とは無縁でも、市井の人にとって大きな事件がストーリーの中心なのである。

そして、大変「善」に満ちた映画である。
お仕着せがましい所も無ければ、誰ひとり超人的な活躍もしない。
ただ、皆が自分にできる範囲の「善行」をする。「商品の足が早いから」と言いながら八百屋の親父は缶詰を渡す。そういう自分にできる善行。主人公にいたっては「誰かと誰かの仲介」をするだけ。なんだよ、そのチャリティーコンサートを開くまでのクダリは。

誰もが自分の出来る範囲で精一杯「善意」を示せば「奇跡」が起きる。
これはそういうファンタジーだ。
偽善とは無縁の善意。なんて理想的。

余談

ほぼラスト、主人公が看護婦に連れられて医者の元へ行くシーン、ただそれだけの場面なのになぜか案内役の看護婦が交代する。何か不思議なシーンだ。なぜ?と思うような場面には、必ず作り手の意図が存在しなければならない。
思い返せば、ロンドンに渡航する工程は途中で少年を別の船に乗せ替えると言っていなかったか。
ならば、この笑撃の、もとい、衝撃の妻の結末は、少年の行く末の暗示ではないだろうか。
きっと、少年にも「奇跡」が起きたのであろうと信じたい。

日本公開2012年4月28日(2011年/フィンランド=仏=独)

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