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しとやかな獣


監督:川島雄三/CS/★5(90点)本家

これは狂言だ。この作品といい『ああ、爆弾』といい、日本の古典芸能とブラックユーモアは相性が良いらしい(<そうか?)
このマンションの一室こそが能舞台であり、金と色の欲にまみれた“獣”たちがこの舞台に出入りして「狂言」が繰り広げられる。
映画は能楽をBGMに始まり、部屋を片付けるその所作もまるで能のような動き。
若尾文子が謎の階段を登るシーンは、おそらく「橋掛り」(歌舞伎で言うところの花道)なのだろう。

「(終戦直後の極貧だった)あの頃に戻りたいか」の一言で、この一家の動機を全て語りきってしまう新藤兼人脚本の手腕。
そして、単なる動機付けだけでなく、この「終戦」を経た「今」という“時代感”に重要な意味がある。

伊藤雄之助と山岡久乃演じる夫婦には“ラジオ”から流れる能楽をバックに静かに佇むシーンが用意され、子供たち姉弟、言い換えれば「若い世代」には“テレビ”のダンスミュージックで激しく踊り狂うというシーンが用意される。
川島雄三の演出は猥雑さが持ち味だと思うのだが、「静と動」を用いて“世代”を描き分けるという見事な切れ味も見せる。そして、確実に“時代感”が意識されている。

映画は1962年制作。
日本は、まるで戦争なんかなかったかのように好景気を迎え、オリンピックなんか招致しちゃうぜ!ってなウハウハの時代。
この映画が皮肉っているのは、そんな時代の波に流されている“人間”という“獣”なのかもしれない。

私は、「真実から生まれたストーリー」なんかよりも、この映画みたいに「虚構の中から真実をえぐり出す」ような映画が好きだ。それがフィクションってもんだ。狂言ってもんだ。

(1962年 大映)

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