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僕達急行 A列車で行こう

僕達急行監督:森田芳光/ユナイテッドシネマとしまえん/
★4(80点)本家公式サイト

一見ふざけた映画だが、実に深い。
映画の割と早い段階で、マツケンと貫地谷しほりが出会う場面がありますね。
そこで、北千住駅を指して言うわけです「あそこから世界のどこにでもいける」と。
これは『家族ゲーム』でやった、「(マンションを指して)沼田君の家はあれですか?」と同種のギャグなんだと思うんですが、この映画のテーマの一つでもあると思うのです。
この映画は「線路が世界を繋いでいるのと同様に、人と人も繋がっている」という物語なのです。
(『家族ゲーム』でも一過性のギャグではなく、「人間の記号化」の象徴的なシーンであった)

いやまあ実際、北千住はいろんな路線が乗り入れていて、意外に乗り換えに便利な駅なんだよ。
あと、瑛太が蒲田に住んでる設定だけど、蒲田もJRと東急が乗り入れてるし、かつて操車場があったじゃない。『砂の器』で死体が発見された場所ですよ。北千住と蒲田は鉄道的に重要な拠点なんですよ(<大嘘)。
貫地谷しほりがイイ女ぶった役を演じて一見似合いませんが、正解なんです。例えばこれが北川景子だったら、北千住なんて似合わないんですよ。ここは、「イイ女」じゃなくて「イイ女ぶった女」で正解なんです(<北千住の住民に怒られるぞ)。

この映画は、鉄道好きの面々が描かれますが、それぞれ楽しみ方が異なります。
この映画のいい所は、それぞれがそれぞれの楽しみ方を決して否定しないんですね。
とかくマニアという者は自分の楽しみ方が絶対で、時に「いかに自分が他者より(マニアとして)優れているか」を自慢したがり、本当に優れていない者に限って“他者を貶める(攻撃する)”ことで自分が優位に立とうとする。
ま、これはマニア道に限った話じゃありませんし、誰しもが持っている“人間の業”のようなもんでもあるんですが。

しかし、この映画は決して他者の「楽しみ方=価値観」を否定しない。
もちろん『電車男』みたいにオタクっぷりを誇張してあざ笑ったりしない。
おそらくこの話は、「他者(の価値観)を受け入れる」ことと「人と人が繋がっている」ことの物語だと思うのです。
もう少し突っ込んで言えば、「他者を受け入れることが人の輪につながる」という価値観を提示した映画なのではなかろうかと思うのです。

私は森田芳光の、特にオリジナル脚本の時の“時代感覚”を信じている。
「バブル経済」という言葉が生まれる前の1986年に発表の『そろばんずく』で、時代の狂乱を先取りした、あの“時代感覚”を知っている。
Windows98登場以前の1996年発表の『(ハル)』でネット時代の到来を予見した、あの“時代感覚”を目の当たりにしている。
『わたし出すわ』で、お金より価値のあるものを提示した、新たな時代の予見を信じている。
そしてこの映画で、「多様な価値観を許容する人と人の輪」という、これから来る時代を信じる。
森田芳光の遺言として。

2012年3月24日公開(2012年 東映)

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