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リアリズムの宿

監督:山下敦弘/DVD/★4(70点)本家

「気まずさ」のロードムービー。シンプルな話だが見事な起承転結。
山下敦弘の映画は、というか向井康介の脚本なのかもしれないが、いつも「気まずい関係」というのが出てくるような気がする。
それは、その間と相まって「笑い」の大きな要素になっているのだが、この映画では単なる一過性の笑いだけでなく、「気まずさ」そのものが物語の根幹にあるように思う。

簡単に言えば「気まずい二人が仲良くなる物語」であるのだが、気まずい二人が仲良くなる過程が、いろんな「気まずさ」を共有して、互いの距離を縮めるという構図になっている。
「今じゃすっかり気の置けない仲間になってるけど、初対面の時はそれなりに緊張もしたし気まずさもあったよね」なんてことは、誰でも経験があるはずだ。そして誰しもが、経験があるはずなのに、その時の「気まずさ」を忘れてしまっている。

山下敦弘の映画は(というか向井康介の脚本なのかもしれないが)、こうした「忘れてしまった気持ち」をいつも上手に描いている。

物語の起承転結も見事で、二人が出会うのが“起”なら、尾野真千子ちん登場からが“承”で、彼女が急に去ってしまう辺りが“転”だろう。
“転”を迎えてから、彼らは“承”でいかに自分達が「華やいだ気分」でいたかを知る。
実に自然な感情の流れ。
山下敦弘の映画は(くどいようだが向井康介の脚本なのかもしれないが)、いつも「気持ちの流れ」が自然だ。

そして“結”は、女子高生・尾野真千子ちんとの遠巻きの再会。

彼女の行動は謎に満ちていて、ただ泳いでいただけならすぐに帰ってもよかったはずなのに、いつまでも彼らと行動を共にする。
「実は自殺しようとしたのだ!」とまでは言わないが、家庭の問題なのか妊娠してしまって寒い海に潜って堕胎しようとしたのか何か分からないが、何やら“事情”があったはずである。
男どもは、根掘り葉掘り事情を聞いたりしない。それがダンディズムだ。
そして、彼女の制服姿=日常生活に戻った姿(まあ、大して浮いた顔はしていないけど)を遠巻きに見て、ちょっとだけ安心して去っていくのだ。これはダンディズムですよ。

女と同棲してようが童貞だろうが共通して、この映画の彼ら(というか山下・向井コンビ)の持つ「女性との距離感」は、「照れ」でもあり「気まずさ」でもあるのだろう。
それは一種のダンディズムだと思う(やせ我慢とも言えるけど)。

この映画、「ダンディズムの宿」と改名したほうがいいと思う。

(2003年 日)

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