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ブルーバレンタイン

監督:デレク・シアンフランス/飯田橋ギンレイ/★4(85点)本家

話の痛切さを増幅する映画的な魅力に溢れている!もしかすると受け止め方に男女差がある映画かもしれないけど。
公開時に気になっていたのだが、「『ブルークリスマス』とは違うらしい(<当たり前だ)」くらいしか情報がなく、観に行く決定打がないまま見逃していた。
けにろん師匠の2011年上半期ナンバー1情報に後押しされて二番館で鑑賞。
観てよかった。シネスケと師匠に深謝。

冒頭から不穏な空気が流れ、現在シーンでは重く冷たい空気感が、過去シーンではゴダール『はなればなれに』ばりの映画的幸福が、台詞や説明ではなく、映像として画面から溢れている。
リアルで確かな演出力。

このリアルで確かな演出力は、ウチのヨメにどっぷりミシェル・ウィリアムズ演じる女性に感情移入させたようで、ライアン・ゴスリング演じる男に「不快指数100%」。
早朝叩き起こされる所や「(犬小屋の)鍵をかけろっていつも言ってんじゃん」と言われる辺りで既にブチ切れていたそうだ(それって映画始まって早々じゃないか)。
「男と女のすれ違いの物語」であるのだが、観客側の受け止め方にも男女差があるのかもしれない。

「男女すれ違いの物語」自体は珍しいものではなく、むしろ人類永遠の難題とも言える。
(男視点の物言い限定になるが)古代ギリシャの賢人達も「女はわからん」的な哲学的名言を残し、日本でも「女心と秋の空」とか言い、フランス映画に至っては製作されるほとんどが「女はわからん映画」なのである。
要するに、長い歴史的な時間をかけても、男に女は分からんのだよ!
私はそうした女性の分からんさ加減に“猫”的な魅力を感じるのだが(時には“犬”みたいな従順さが欲しいと思う時もあるけど)、この映画はもう少し分析的で、「変わらない男」と「成長していく女性」という形で描写している。
(普通「変わらない男」は「夢を追い続ける」「俺はミュージシャンになるんだ」的な扱いが多いのだが、この映画はそうしたわけでもなく、実に良くできている。)

人類永遠の難題である男女関係は、当然数々の映画の題材に取り上げられてきたわけだが、そのほとんどは「出会いの過程」「分かれる過程」を中心に描いたものである。
たまに「別れ」の結末を先に提示して、楽しかった「出会い」と「二人が冷めていく過程」を描く映画もある。
私はこれを「かつてはあんなに愛しあったのに」系映画と呼称し、フランソワ・オゾン『ふたりの5つの分かれ路』とオードリー・ヘプバーン主演『いつも2人で』が代表例だと断じているのだが、そもそも「冷めていく過程」なんて観ていてそう面白いもんじゃない。
『ブルーバレンタイン』はこの分類に限りなく近いが、微妙に違う。
この映画は「別れ」という結末の少し前から描いているのだ。

少し見方を変えれば、「冷めかかった二人が別れの結論を導き出すまでの一晩の物語」に見える。
言い換えれば「実はもう答えが出ているのに直視しなかった二人が、はっきりと答えを口にするまでの物語」とも言える。
そこにカットバックで「楽しかった出会いの頃」が入ることで(そして冷めていく過程を省略することで)、「どうして二人はすれ違ったか」ではなく「最初からボタンを掛け違ったのではないか」と思えないこともない。

そう思って考えなおしてみれば、男は「100%の女の子」に出会ったような一目惚れをし、女は心の空虚を埋めるように男に惹かれていったのだ。
それはどこかで、「ゴール」に出会った男と「(成長)過程」で出会った女の物語でもあるようにも思う。

日本公開2011年4月23日(2010年 米)

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