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人間の條件 第五部 死の脱出篇/第六部 曠野の彷徨篇

人間の条件3監督:小林正樹/BS録画/
★5(90点)本家

なんという展開。なんという豪華キャスト。
「実体験に基づいたベストセラー」ということを知っていたせいで、心のどこかで「実話」だと思い込んでいたフシがあった。
しかし、ある意味“期待はずれ”のオチ、つまり「生き残った者の体験談」に終わらせなかったことによって、この物語は高度な次元に至っている。
いやまあ、もとより「よかったよかった」「めでたしめでたし」的な安いお涙頂戴なんか狙ってないだろうけどね。
ましてや『突入せよ!あさま山荘事件』の佐々のおやじの自慢話みたいにする気もなかったろうし。

私は1部・2部の感想で、「梶という異物を放り込むことで周囲の異常性を際立たせる」といった趣旨のことを書いた。『嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』の野原しんのすけと同じだと書いた。いや、書いてない。

ほとんど全ての事象が、梶の目を通して描かれ、梶の言葉を通して制作者の思想が語られる。
ファシズムも共産主義も否定し、“人が生きる”という根源的なことだけを追求する。
周囲の異常性を際だたせるための“異物”として物語に放り込まれた梶は、“人が生きる”という根源的なことを際立たせるための結末を歩まされる。
これはとっても高度な作劇だ。

戦前の教育をまともに受けた世代なら「名誉ある死」だろうし、
戦後民主主義をまともに受けて育った世代なら「正義は勝つ」という結末だろう。
敗戦と共に「国の教育が間違っていた」ことを知り、知識だけで知っていた共産主義(社会主義)も違うことを知った者だから選択できた結末だったように思う。

いやもう、長い時間付き合って、笠智衆と高峰秀子が出てきた時には、短い安堵と共に「いやあ、遠い所に来ちゃったなあ」と思ったよ。

日本人なら観るべし。全6部9時間半。長えよ。

(1961年 松竹)

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