November 2018  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

父と暮せば

監督:黒木和雄/BS/★4(85点)本家

語るべき物。物語る力。
この映画で圧倒されたのは、井上ひさしの原作(戯曲)の「物語る力」だった。

劇中、民間伝承を語り継ぐという形を借りて、この物語は「語るべき物(語り継ぐべき物)」があると強く訴える。
「ありのままを伝えるんだ」という言葉を借りて、市井の人の視点で原爆被害を物語る。
そして我々は、あの戦争を語り継ぎ、決して忘れてはならない。
と思わせる創作物としての「物語る力」がある。

おそらく黒木和雄は、意図的に舞台的な演出を残したように思える。
例えば、宮沢りえが親友の母親に会ったエピソードを話すシーン。
凡庸な監督(あるいはプロデューサー)なら、ここは一人語りでなく実際に再現するだろう(たぶん私もそうする)。
「私は幸せになってはいけない」と彼女が強く思うきっかけのシーンでもあり、インパクトを持って観客の感情を揺さぶるシーンとなり得るからだ。
しかし黒木和雄クラスになると映画全体を見回している。
このシーンのインパクトが強すぎると、悲しみを強調しすぎて物語の本質を見失いかねないのだ。

この映画の本質は、「語るべき物(語り継ぐべき物)」を描くと同時に、「一歩踏み出す物語」でもあるのだ。
この映画は、父娘と浅野忠信演じる男しか登場しない。意図的に他の人物を登場させない。
父が去り、男が家に来る“予感”で映画は終わる。
父は過去を象徴し、男は未来(あるいは希望)を象徴しているに違いない。

2004年7月31日公開(2004年)

comments

   

trackback

pagetop