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奇跡

奇跡監督:是枝裕和/渋谷シネマライズ/
★5(93点)本家公式サイト

是枝らしからぬ“善”に満ちた物語。この映画自体が奇跡だ。
この映画を観た2011年6月19日現在で、今年のナンバー1映画を、善に満ちた本作にしようか、悪に満ちた『冷たい熱帯魚』にしようか迷っている。困った。

どういう経緯でこの企画が持ち上がって、どういう発想でこのストーリーを思い付いたのか分からないが、中間地点に雲仙普賢岳があるなんて奇跡だと思う。あの駅員の話で、前田兄が「世界」を選択することにグッと説得力が増すのだ。

そして、九州新幹線が開通する時期にまえだまえだがちょうどいい年齢だったことも奇跡だ。
ついでに言えば、樹木希林の実の孫娘がちょうどいい年齢の美少女に成長していたのも奇跡だ。

「(大人の役者は)背中で演技できる人ばかりだから余計なことをしないくいい」と樹木希林が言い、それを受けた是枝が大人のシーンを減らして子供のシーンを増やしたと聞く。もしこれが本当なら、それも奇跡だ。
たしかに役者いいよね。だってあそこにりりィが出てくるんだぜ。存在感のある女優になったよね。ベッドの上で泣いてた人とは思えない。

そして何より、是枝自身の“視点”が昔に比べて優しさを増したこの時期に、この企画がハマったことも奇跡だと思う。

この映画の大人たちは、ほぼ常に世の中と接点を持っている。
樹木希林でさえ、ハワイアンで世の中と接点を持っている。
しかし子供は違う。「失った家族」という「過去の世界」の復活を望んでいる。
そしてこれは、冒険の旅を経て「今の世界」を受け入れるという、大人の階段を登る少年の成長譚なのだ。
実に見事な物語であり、私は大人の階段を登る少年の物語に弱いのだ。

6月11日公開(2011年 GAGA)

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