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陰獣


監督:バーベット・シュローダー/CS
★2(22点)本家

中途半端なガイジンの日本趣味。中途半端な乱歩趣味。中途半端な原作ストーリーの忠実さ。
フランス人が何を思って乱歩作品を、それも「陰獣」を映画化したのか全く分からないが、割と律儀にストーリーは原作をなぞっている。
いやまあ、芸妓なんかじゃないけどね。ガイジンの変な日本趣味。
たしか本当は人妻なんだ、記憶は定かじゃないけど。
まず人妻設定じゃない段階で淫靡さが足りない。

「陰獣」は、乱歩(戦前)の集大成と呼ぶ人もいるほどの作品なのだが、この作品の面白さは、ストーリーというよりも、“江戸川乱歩の自己パロディ”という点にある。

原作では、小説家・大江春泥の作品は乱歩の実際の作品をもじったタイトルで(例えば「B坂の殺人」とか「屋根裏のナントカ」とかだったと思う)、その作品に絡んだ事件や現場が登場したように記憶している。
映画ではバッサリなくなっているが(それはそれでいいのだが)、屋根裏のエピソード辺りにその片鱗が残されているのが分かる。
要するに、変質者らしき大江春泥が江戸川乱歩自身を想起させるという仕掛けがある。
当時、人気作家でありながら文壇からは「エログロ作家」と見なされ、「暗闇で蝋燭の灯で執筆してるらしいぜ」と噂されてた江戸川乱歩が、「覆面変態作家」とオーバーラップするから面白いのだ。

もう少し余計なことを言うと、これは私の推測だが、自作(のもじり)の内容に沿って事件が起きるという展開は、マザーグースの歌詞に沿って事件が起きる展開に似ていると思う(乱歩の方はかなり不器用だが)。
しかし、ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」は「陰獣」とほぼ同時期で、リアルタイムで海外の推理小説が輸入されたとは考えにくい当時の状況を考えれば、それ以前に同様のプロットを扱った作品があって両者共にそれに触発されたか、どっちかがどっちかを真似したのではないかと考えられる。
ちなみに、マザーグース風の童謡(マザーグースではなくマザーグース風ね)に沿って事件が起きるアガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」は「陰獣」の10年後だし、当然、横溝正史「獄門島」「悪魔の手毬唄」はもっと後である。
(「陰獣」を掲載した雑誌の当時の編集長が横溝正史であり、横溝正史が乱歩の影響を受けたとも考えられる)

で、話はだいぶ横道に逸れて俺の言いたいことだけ言い放ったが、映画の話に戻ると、この話のオモシロポイントは“自己パロディ”にあって、今時映画化するほど面白いストーリーじゃないと思うのだ。
それでもこの話を映画化するというのなら、律儀にストーリーを追うことよりも、もっと別なポイントに面白みを見出して製作すべきではなかっただろうか。
例えば、主人公の男の葛藤をもっと掘り下げるとか。

あ、そうか。ガイジンさんの変な日本趣味にオモシロポイントを見出したのか。

そういや、晩年の加藤泰も撮ってたな。あれは撮らされたのか。

2009年8月22日公開(2008年 仏)

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