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キック・アス

キック・アス監督:マシュー・ボーン/シネセゾン渋谷/
★5(91点)本家公式サイト

斜に構えたウヒウヒ映画かと思ったら王道の系譜。変化球は見せ玉で直球勝負のクールな正統派。心の底から感動した。
アメコミ原作でありながらハリウッド臭があまりしない。
ほとんど予備知識なく観ていたのだが、早々に「イギリス映画っぽいな」と思い始めていた。
後から、監督はガイ・リッチーの仲間だということを知った。
そう考えると、すごくガイ・リッチーっぽい映画の様にも思えてくる。
まあ、ガイ・リッチーはマドンナと結婚してダメになったけどね。

変化球設定ながらおバカ映画に貶めない。
小ネタは挟むけどパロディーで終わらない。
ある意味、ボンクラ男子が痛みと孤独を知る成長物として正統派の青春ヒーロー映画とも言えるし、復讐物としての王道とも言える。

そして何より、ヒットガールがクールだ。
アクションがカッコイイというのもあるが、キャラクター造形もいい。
先に述べたように、ボンクラ男子がヒーローを目指して初めて痛みや孤独を知るが、本当の悲劇が訪れるのはヒットガールの方である。
しかしこの少女は、既にヒーローへの過程を終え、痛みや孤独に翻弄されることはない。
クールだ。イカしてる。

クリストファー・ノーランの『バットマン』シリーズよりはるかに面白いと思うのだが、『ダークナイト』と本作は、別な意味で「現代的な映画だなあ」と思う。

『ダークナイト』は、荒唐無稽な設定にいちいち説明をつける“世知辛い時代”を反映した余裕のない映画だった。
本作は、スーパーヒーローだけではなく、西部劇やギャング映画、あるいは殺し屋映画という、これまで培われたエッセンスを“今風”に凝縮した映画だと思う。
その“今風”の凝縮の仕方が、パロディなら比較的な楽な調理法なのだが、それを避けて王道に回帰した点を大いに評価したい。

私は心の底から楽しんだし感動したよ。
まあ、原作ファンがどう思うか分からないけどね。

2010年12月18日公開(2010年 英=米)

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