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悪人

悪人監督:李相日/ユナイテッドシネマとしまえん/
★5(90点)本家公式サイト

リ・サンイルの『愛の嵐』
吉田修一の本は読んだことがないのだが、『パレード』を観ただけでも現代人に対する鋭い視点を持ち合わせていることが分かる。
本作では、「他人を見下すこと」「自分を虚飾すること」ではなく、真摯に「人を信じる」ことの重要性に集約されると思う。
当然、前者は、昨年の「あんた主役張りすぎ大賞」岡田将生と『愛のむきだし』以来ゾッコンの満島ひかりに象徴され、後者は主人公二人に象徴される。

灯台を見ている間に母親に捨てられた男が、その灯台で、買い物に行ったきり戻らない彼女を待つ。彼には捨てられたトラウマが蘇ったろう。しかし、彼女は走って戻ってくる。ここにこそ「人を信じる力」の再生がある。

そして私は、この映画のテーマ性から離れた所で(本当はそう離れていないと思っているのだが)、「この世にいるのは私たち二人だけ映画」だと思うのだ。
私が思うに、この「世界に二人だけ映画」というジャンルの傑作は、リリアーナ・カバーニ『愛の嵐』であり、森田芳光『それから』であり、駄作は森田芳光『失楽園』なのである。すごいな森田君!あとね、余談だけど、この映画以前に深津絵里で一番いい映画は『(ハル)』なんだぜ。

本作に於ける「二人だけの世界」は、自首直前の車内と同じだ。
外の喧騒はほとんど聞こえない二人だけの空間。ここでは二人を阻む障害は何もない。
だが、一歩外へ出れば土砂降りなのだ。

その後二人は、「二人だけの世界」の舞台を車内から灯台へと移す。車ではなくバスで移動することからもそう読み取れる。

「いいわね、毎日海が見られて」
「そんなことはない。海を目の前にしていると、これ以上行き先が無いように思える」(<ウロ覚え)

そう言っていた、海を目の前にする灯台に向かう。
もうこれ以上、行く先の無い場所を二人は選んだのだ。
精神的ばかりではなく、車ではなくバスで向かうことから、物理的にも移動手段も捨てたのだ。
もしかすると、心中すら考えていかもしれない。

携帯で知り合った二人(初めての待ち合わせメールのタイトルにRE:が多いことから、相当数やりとりしたのだろう)。
顔も知らずにメールだけで心を通わせ、体を交わし、最後は生死の際という高みにまで接近するも引き裂かれる二人。
これが「この世にいるのは私たち二人だけ映画」でなければ何だと言うんだ!

李相日は、『69』が嘘のように腕を上げている。『フラガール』は「シーン(だけ)はよくできた映画」と評したが、この映画はほとんど完璧に近いと思う。いい映画を観させてもらった。
役者の使い方は卑怯だけどな。柄本明とか樹木希林とか光石研とか。

2010年9月11日公開(2010年 東宝他)

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