どういうわけだか私はこの映画が大好きである。
ストーリーそのものよりも、この映画の持つ空気感が大好きなのである。
昭和39年の舞台を昭和50年に撮っているのだが、とっても“匂い”のある、とっても貫禄ある映画だと思う。
政界という特殊な舞台ではあるが、この映画は「昭和」を描く映画に対する私の指標の一つでもある。
おそらく、この映画以上に「昭和」な映画はいまだ一つもない。いや、実際の「昭和」よりも「昭和」の空気がある(どういうことだ)。
山本薩夫と黒澤明は同い年である。
1970年代、山本薩夫はほぼ毎年のように大作を世に送り出す絶好調っぷりだった。
一方、その頃の黒澤は映画を撮らせてもらえない時期。
戦後の復興期から成長期は黒澤映画が、経済成長を遂げた後は山本薩夫映画が時代にマッチしたのかもしれない。
(1975年 大映)
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