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青春の殺人者



監督:長谷川和彦/渋谷シネマヴェーラ/
★5(90点)本家
昭和40-50年代の男子の『ゴースト・ワールド』。水谷豊=ソーラ・バーチ。なんだかとっても好き。(本文中には『ゴースト・ワールド』のネタバレは含まないけど『青春の蹉跌』と『女医の愛欲日記』のネタバレを少しだけ含むよ)
実際の事件をモチーフに作られた映画の特集上映で、東映低予算ポルノ『女医の愛欲日記』(未登録)ってのと併せて観た。この併映が『シベ超』を凌駕するすんごいトンデモ映画でさ、冒頭いきなり全裸の女性が乗馬してるわ、本編に全然関係なく市原悦子が登場してヤギの話を始めるわ。わずか3時間の間に5点映画と1点映画に出会う貴重な体験をしたよ。あと、わずか3時間の間に市原悦子を2度も見たよ。オッパイもたくさん見たよ。渋谷シネマヴェーラは「映画好き」と「エロオヤジ」を取り込もうとして「映画好きのエロオヤジ」しか取り込めてないんじゃなかろーか?

なんて与太話はさておき

本作の監督・長谷川ゴジ和彦が脚本を書いた『青春の蹉跌』からわずか2年後の作品にもかかわらず、私の持つ感想は大きく違う。
『青春の蹉跌』は私より上の年代の青春の印象を受けたが、本作は私の年代の青春のように思える。いや、実際は俺が2歳の時の事件だから全然上の世代なんだけどね。でもねえ、感覚的にすごくしっくり来たんだわ。

『青春の蹉跌』は“エリートの虚無感”を描いていたと思うのですが、本作は“やっと中流になれた家庭”に生まれた子供の“方向感の無さ”なんだと思うのです。

父親が貧しいアイスキャンディー売りをしていたエピソードがありますが、苦労して苦労して、今際の際に「もう働かなくていいんだ」と呟くほど働き詰めて、今じゃ2階建ての一軒家に成田に土地買ってスナックまで始めてるんです。子供の大学進学まで視野に入れ、8mmカメラや車を買い与え、興信所に依頼する余裕もある。やっと貧困層から這い上がった親なんです。
一方、原田美枝子が一瞬だけ実家に戻るのですが、これしかない!ってくらいベストな白川和子の使い方で、夜な夜な酒飲んで暮らしてる貧困家庭を見せるんですね。
これポイント。
このシーンの意図は、ストーリー上の必然性よりも貧困家庭を見せることにあるんです。
主人公二人は昔近所に住んでいたんですよね。つまり、水谷豊の家庭は貧困層から這い上がり、原田美枝子の家庭は貧困層のままウダウダ暮らし続けている、ということなのです。
どういうことかと言うと、両親が二人の交際を反対するのは、女が淫乱だなんだということもさることながら、根底に「貧困を憎む」という感情があるのです。
自分達が苦労を重ねて抜け出したあの場所に、息子が再び片足突っ込もうとしている。だからヤイノヤイノ言ったのです。

そんな親にがんじがらめに絡め取られた様を“汚れ”で描写しているように思えるのです。

実家に戻る水谷豊は、トラックが跳ね上げた水しぶきを頭からかぶり、雨でずぶ濡れになります。
そして、世界屈指の室内劇を繰り広げる前半で血みどろに汚れるのです。
親を消した後、祭りの花火に見送られながらサッパリと服を着替えるのです。
やがて、風呂場で二人が抱き合うシーンでは、汚れを水で洗い流し、服さえも無い清い身体をもって、親の呪縛からの解放を表現しているのです。
しかし、逃亡途中で親を思い出し、スナックに戻って死にきれなかった時は、再び泥だらけに戻るのです。すごいな。

これは、誰の手腕なんだろう?
正直、ゴジ演出は『太陽を盗んだ男』に通じる、一歩間違えたらトンデモ映画になりそうな波乱含みな匂いがあるんだけどなあ。大島渚と組むことの多い田村孟脚本かね?今村プロかね?

(1976年 ATG=今村プロ)

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