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人間失格



監督:荒戸源次郎/ユナイテッドシネマとしまえん/★2(39点)本家公式サイト

本当に太宰好きだったら「人間失格」を映像化しようと思うはずがない。荒戸源次郎は自分の立ち位置が分かってないんだと思う。そうは言っても、想像してたほど酷くはなかったんだけど。
『パンドラの匣』の時も書いたけど、恥ずかしながら私、太宰好きなんです。
中でも「人間失格」は中学生の頃に読んで以来、人生の節目節目で読み返し、おそらく生涯で最も何度も読んだ愛読書なのです。

思い入れのある原作だからイメージが違う!とか言うつもりはありません。
いやまあ、中原中也だの戦争だの余計なエピソードが加わってますがね。そんな暇があったら、この話の肝である「道化を演じる男」という部分をきちんと描くべきだとは思いますけど。だって、それが無かったら主人公の行動理由が明確にならないじゃん。

この映画の根本的な間違いはね、この作品を映画化したことにあると思うんです(<元も子もない)

太宰治生誕100年とかのいろんな番組を見て分かったんですが、太宰好きを公言する著名人は、ほぼ間違いなく“ヒネクレ者”なんですね。私も人のこと言えませんが。世の中を斜めに見ている思春期に太宰と出会うんですよ、たいがい。
こうした太宰好き=ヒネクレ者は、好きな作品にメジャー作品を挙げることはまずない。
「女生徒」とか「トカトントン」とかヒネクレたことを言うわけですよ。
まかり間違っても「走れメロス」なんて言う人はいないし、「人間失格」なんて言わないんですね。
まあ「斜陽」はストーリーが映画向きなんで分からんではないんですが、「人間失格」はねぇ。映画化したい気持ちは分からんではないけど、映画化しようと思う時点で太宰好きじゃないんですよ。

そして、世の中を斜めに見ていたヒネクレ者達は、自分のポジションを分かって思春期を過ごしている傾向にあります。まあ、たいがいの文学少年少女はその傾向があるけどね。
太宰の作品が自嘲するような独白型で、そこに共感するのが太宰にハマる特徴ですから、正しいかどうかはともかく、どこかで自己を客観的に見つめてるんですね。
だから「人間失格」は、“道化”を演じる“自分”を自覚している点が根底にあって、思春期の少年少女は共感するのです。

ところが荒戸源次郎はそうじゃない。
『赤目四十八瀧』の時も書きましたが、一度は死んだ鈴木清順という超変化球投手を再生させ、阪本順治という荒れ球本格派投手を見出したプロデューサーなわけですが、自分がマウンドに上がったらアマチュアレベルの球しか投げられていないことに気付いていない。
今回は特に、少し本格派の投球を志したようにも見受けられますが、全然全然。
自分のポジションが分かってない。

もしこの話を映画化するんだったら、思い切って第三者の語り部を置くべきだと思うな。

2010年2月20日公開(2009年 角川映画)

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