分かるか分からないかと言われればよく分かるし、面白いか面白くないかと言えば面白い部類だとは思うのだが、ノレるかノレないかと言われるとノレない。
結論を言ってしまえば、「枠組み」は面白いんだが「中身」が伴ってない。
その端的な例が中盤のミュージカルシーンで、主人公の気持ちの高揚の表現としてはミュージカルで正解なんだが、そのミュージカル自体に高揚感がない。
同じことがこの映画全編に言えて、恋をする高揚感が丁寧に描けていないから観ていてワクワクしないし、ワクワクしないから主人公の落胆にも共感できない。
彼女の腕に理想のビル群の絵を描くシーンがありますね。これだって有効に活かされてるように思えない。
彼女に触れるシーンなわけですよ。しかも腕の内側ですよ。もっとワクワクドキドキしていい場面じゃないですか。これが内ももだったら鼻血出してもいいくらいの場面ですよ。
構成上もっと前に配置すれば、二人が深く付き合うきっかけとして意味あるシーンになったと思うんですがね。
“理想”の街を「タトゥーみたい」に彼女に刻むわけでしょ。それが何の暗喩にもなっていない。
なんなら、描いている最中に「彼女の指が綺麗だと思った」ぐらいの台詞が必要ですよ。その綺麗だと思った指に結婚指輪をはめるから悲しいんじゃないですか。
ベタベタする必要はないんですが、ここ一番での丁寧さが足らない気がするんです。
この手の話には丁寧さが必要だと思うし、軽やかさを重視しても丁寧さは同居できると思うんですけどねえ。
日本公開2010年1月9日(2009年 米)
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