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夜と霧




監督:アラン・レネ/渋谷シネマヴェーラ/★3(68点)本家

全人類必見の作品だが、21世紀の今観ればある意味『エルミタージュ幻想』にも思える。
この映画が1957年、終戦からわずか十余年後に制作されたことに意義があると思う。
これが世界で最初かどうかは知らないが、かなり早期に収容所の実態を世界に知らしめた作品だろう。
そして、この記憶を風化させまいという意図が明確に提示されている。
未来永劫同じ過ちを繰り返さぬために、全ての人がこの悲しい記憶を心に刻むべきだと思う。

しかし、戦後50年以上経て初めてこの作品を観た私個人にとっては、残念ながら既に見知った映像ばかりだった。

冒頭の「一糸乱れぬナチス」の描写は、つい先日観た『意志の勝利』の映像だし、当時の収容所の模様はNHKスペシャル「映像の世紀」で毎週死ぬほど号泣しながら観たものばかり。いやもちろん「映像の世紀」の方が後なんだけどね。
加古隆「パリは燃えているか」の旋律に載せて流れる衝撃的な映像に、二度書くけど、死ぬほど号泣した。憐憫とかじゃないんだよね。なんだろう?あまりの衝撃に泣いたんだよ。目に焼き付いて離れない映像ってこういうことなんだと思う。

しかし、ここまで書いてきたことは映画評じゃない。事実に関する感想だ。

この作品、ドキュメンタリーなのだが、どちらかと言うと詩、あるいは「兵どもが夢の跡」的な俳句にも思える。
収容所跡を訪れ、そこでの出来事に想いを馳せる。後にソクーロフがやった『エルミタージュ幻想』に似ている。
ただ、余計な言葉よりも映像が説得力を持っているという意味では、ものすごく映画的だと思う。

(1955年 仏)


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