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破戒




監督:市川崑/新宿角川シネマ/
★3(65点)本家

どこぞの誰かが言っていた。市川崑・和田夏十は人間を丁寧に描こうとしている。これが大島渚だったら「戦闘映画」になっていただろう、と。
1950年代後半から始まった市川崑怒涛の快進撃時期の一本で、1962年(昭和37年)のキネ旬4位。ちなみに1位は市川崑『私は二歳』。その振り幅もすごいな。船越英一郎も。あ、いや、船越英一郎は似たようなもんだけど。

いやまあ、どういう経緯で作られたか知らないけど、なんとなく想像できる。
永田雅一に特別な思想があったわけじゃないだろう。ただ「売れる文芸作品」を求めていたにすぎない。だって大作主義の辣腕永田だぜ。この頃大映にいた市川崑に文芸作品が多いのはそのせいもあるだろう。
いずれにせよ「もう一本雷蔵で」という永田雅一のリクエストが発端だったことは事実らしい。

そもそも島崎藤村だって、どんだけ思想的なものがあったか疑問だしね。
実際に小諸で教師をしていたことがあったそうだが(これは主人公と同じだ)、その前は女学校教師で教え子に手ぇ出してクビになったらしいし(これは鴈治郎の坊主に投影されていると思われる)、後には姪と近親相姦したらしいし(これも鴈治郎に投影されてるや)、なかなかトリッキーな人だったらしいですよ。顔も知らないけど。

おそらく「破戒」を題材に選んだのは市川崑なのだろう。
ものの本によれば、本作の前年、市川崑・和田夏十夫妻は「破戒」をテレビドラマ化しているそうだ。
さらに言えば、木下恵介版の前に阿部豊で映画化予定がポシャったそうで、そのポシャった時のチーフ助監督が市川崑だったらしい。

当然、50年以上も昔の明治時代の小説を映画化するには(当時の)現代的な意義があったに違いない。
もちろん、当時、否、今でも、部落問題が完全に解決したとは言えないだろうが(私も中学時代に講堂で部落問題のフィルムを見せられたよ)、この映画の本当の主眼はそこではないと思う。

「胸に悩みを秘めた青年」という60年代的青春映画。これが私の解釈だ。

(1962年 大映)

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