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スパイ・ゾルゲ

監督:篠田正浩/新宿コマ東宝/★2(29点)

これは間違いなく篠田正浩(の中では)最高傑作。
本作で引退宣言してますけど本当でしょうか?
本人曰く「これ以上imagineが出てこない」とか。imagineですか。そうでしょうとも。枯渇してますよね、明らかに。笑っちゃいましたよ。
だとしたらこれが遺作ですね。「巨匠の遺作に傑作なし」とは私の作った法則ですが、本作は傑作です。篠田正浩作品の中では。

構図の切り取り方や編集のタイミングをもって「映画的文法」と呼ぶのなら、この人の文法は私にはダメなのだ。波長とか肌が「合わない」でも「嫌い」でもなく、「ダメ」なのだ。
本作でも「オッ!」と思うような構図は一ヶ所だけ。3時間の長尺でたった一ヶ所だけ。もうね、始まったとたんにダメダメ光線フルスロットルなの。変な思い込み無しに、楽しもう楽しもうと自己暗示かけてワクワク&ノリノリで観たんですよ。ダメダメ。全然ダメ。いや、初めから分かってたことだけど。

なら何故篠田作品のためにわざわざ劇場に足を運んだか。それは「ゾルゲ」だったから。

ゾルゲに関してはちょっと興味がありまして、尾崎秀実の実弟が書いたゾルゲ本とか持ってるんですが、時間に余裕があったらもっといろいろ調べてみたい対象なんです。そして「あさま山荘」に次いで、「映画化したら面白い日本の史実(近代)」シリーズとして温めていた企画なんです(私が温めていてもどうなるもんでもないが)。

そして私が想像していた以上に、上手くまとまっていました。
「ゾルゲという一人の人間を通して日本近代史を描く」という意気込みは買うし、私の希望通りでもある。
だから傑作(篠田作品の中では)。
「太平洋戦争へ至る過程」を親切丁寧に描いていて、むしろ勉強になったくらい。
強いて言うなら「二つの祖国を持つ男が両方の国から捨てられていく悲哀」こそクライマックスなんですけどね、私の中では。でもその点に関しては不満はない。

では何故2点なのか?そりゃもう、映画がダメダメだからさ。
それなりに面白いという人もいるかもしれませんが、放っといたって面白い話なんです。もっと面白くなるはずなのに、なんだこのダメダメビームは。

英語圏映画じゃないんだから、ちゃんとロシア語とかドイツ語を使えよ。それとも何か?日本映画だから日本語以外は全部英語でもバレないってか?篠田正浩ってそういう手抜きするんだよ。
煙の中一人でダーッて走って「戦争」だあ?神は細部に宿るんだぞ。つまんないCGに金かけてる暇があったら細部をちゃんとしてくれよ。
役者の選定も同じ。上川隆也なんか特高の面構えじゃない。むしろ捕まる側の顔。

どういう形でまとめるのかと思っていたら、まさかゾルゲと尾崎の二者の回想なんて最も安易なダサダサ形式をとるとは思わなんだ。
誰の視点なのか?という物語における重要な基礎がなってない。
二者の回想を使う場合は、それ自体が物語の根幹に関わらねばならないというのが私のこだわり。つまり各自の言い分が異なる『羅生門』形式でなければならない。
だったらいっそ「神の視点」で時系列で並べた方がナンボかまし。
どうしても回想形式がいいなら、そうさな、椎名桔平視点かな。事件の真相を突き止めようとする者の手記という形式。終いには葉月里緒菜視点だもん。
画面を構成する力が無いことは分かっていたが、話を構成する力も無かったとは、呆れて物が言えない。
ずいぶん語っておいてナンだけど。

2003年6月14日公開(2003年日=独)3時間2分


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