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過去のない男

監督:アキ・カウリスマキ/恵比寿ガーデンシネマ/★5(88点)gooDB

イビツだが鋭い角はない、歪んだ球体のような映画。むしろ鋼鉄の軟体か。
なんとも不思議な食感。素晴らしくファンタジー。

恥ずかしながらカウリスマキ初体験。終始ニヤニヤウヒウヒ。
異常なほどシンプルで、シンプルすぎて意外。
それなりの数の映画を観てきたが、これはなんと表現したものか。この筆舌につくし難い感覚はなんだろう?この不可思議な食感はクセになるかも。

「思い出は美しすぎて」という八神純子の歌があるが、私個人のことを言えば、思い出すのは恥じ入ったことだったり嫌だったことだったり。「そこに穴があれば」といったようなものばかりで、美しい過去を思い出すことはまずない。

私はこれと同様の匂いをこの映画に感じたのだ。

「過去より今」などという大層な思想を私の個人談に持ち込む気はないが、普通常識的に考えれば過去探し、自分探しをするよなあ。いきなりジャガイモ植えるかよ!定住する気かよ!

というわけでカウリスマキの予備知識はほとんどない男なのだが、この「間」は小津の「間」なのでしょうね。
小津作品はその家族関係や社会状況を我々日本人は皮膚感覚で知っている。
ところが、社会状況はおろかフィンランドの空の色すら知らない私。
それがまた不思議な異空間となって私の前に立ちはだかる。
「小津はSFだ」と誰かがどこかで書いていたが、カウリスマキもまた独特の「宇宙」を持つ作家なのだな。
作家主義の私の食指は非常に動いたが、彼について語るにはもう少し勉強が必要だ。

正直カンヌでグランプリをとった理由も分からないが、私が5点付けてる理由も分からない。
いやあ深いね、映画は。

日本公開2003年3月15日(2002年フィンランド=独=仏)1時間37分


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