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ノスタルジア

監督:アンドレイ・タルコフスキー/渋谷イメージフォーラム/★4(78点)gooDB

現実と理想の狭間で
『8 1/2』と並ぶ世界2大温泉映画、なんて書くと怒られそうだな。真面目に書こう。

うちのヨメがふと漏らした。「水は現実で火は理想なのではないか」と。

この解釈を拡大させていくと、現実はいつも冷たく降り注ぎ、理想の炎はか細くすぐに消えてしまう(時に身を滅ぼすほど強い場合もある)。その狭間で人は彷徨うしかないのか。

タルコフスキーの「水と火」は「生と破壊」と解釈されることが多い。これらを等記号でつなげるなら、生きることが現実であり、理想は現実の破壊の先に存在するということか。
それもこれも「望郷」の念の現れなのか。
さらに序盤では女性論も展開される。「女ばかりが神にすがるのは何故?」かと。
現実的な女性といつまでも理想を追い続ける男(そして女は去っていく)という構図は私の邪推か。

いずれにせよタルコフスキー映画はその解釈の幅が広い。
諸々の場で自分の作品について語っているが、これは「ショットの意味や必然性」など海外のプレスがあれこれツッコんで聞いてくることへの回答であって(ワイドショー的な話しかできない日本のインタビュアーのなんと愚かなことよ)、それが正解という訳ではないと思う(裏を返せばそれだけツッコミ甲斐のある作品を作ってるってことだが)。
正解が一つしかないならこんな強烈なイメージを生み出す必要はない。
タルコフスキーはあくまで「発想の源」を語っているのであって、結果として描かれた詩的イメージの解釈は観客に委ねられていると考えるべきだろう。
解釈に正解などない。もし万人の解釈が一つにまとまったら、その時点でタルコフスキー映画は死んでしまうのだ。正しい解釈をしようとカッコつけるから難しいのだ。自由に勝手気ままに半睡状態で受け入れればいい。

それにしても何と強烈なラストショット。
あれを国境と解釈するか、心の壁と解釈するか、ソ連の現状と解釈するか、いや、もっと無限の解釈があるだろう。そんなこと考える以前に圧倒的なイメージにのたうち回ったけど。

(1983年伊) 2時間6分


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