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河内山宗俊




監督:山中貞雄/ラピュタ阿佐ヶ谷/★4(89点)再鑑賞↑本家

完璧な復元を求む。それが無理なら、脚本に一切手を加えず全く同じカット割りでリメイクしてくれ。ガス・バン・サントにでも頼んだらどうだ?(再鑑賞でレビュー書き換え)
上記のコメントを書いたのはガス・バン・サントが『サイコ』の完全リメイクをした時だから、1998年頃だと思う。約10年ぶりの再鑑賞。以前はDVD鑑賞だったが今回映画館。不思議と音声も聞き取りやすかった。こんなに面白かったっけ?
その間2004年に『百万両の壺』のリメイクがあったが、リメイクするならこっちだろ。
正確には「【山中貞雄】の河内山宗俊」。

河内山宗俊という人は、まあWikipediaでも読んでもらえば分かることなんだが、河内山宗春という実在の人物だそうで、江戸城に出入りする表坊主が投獄されて獄死したというスキャンダルから庶民の間で大衆週刊誌的な興味で妄想が広まり、(その実際のところは不明だが)裏で結構悪いことをしてて最終的に大名を恐喝したらしいことから「権力に抵抗したダークヒーロー」的なイメージが付いたらしい。
日本は意外とダークヒーローが好きみたいだね。『ねずみ小僧』とか『GOEMON』とか。ん?『GOEMON』?
山中貞雄の前作だって(余話だけど)ダークヒーロー『丹下左膳』だし(丹下左膳は元々大岡越前(大岡政談)の一悪役)。

で、河内山宗俊のダークヒーローっぷりは明治時代に入って、講談「天保六花撰」で集大成となったそうだが、それを黙阿弥が脚色した歌舞伎が「【山中貞雄】の河内山宗俊」の元だそうで、実は登場人物などはほぼ一緒なのだそうだ。登場人物は一緒でも話は全然違うらしいけどね(笑)。
ちなみに山中の次作『人情紙風船』の原作は、同じく黙阿弥。
この河竹黙阿弥と言う人の作品は、どうやら流麗な台詞回しに特徴があったらしい。
ほら、「流麗な台詞回し」ってなんだか山中貞雄好みっぽいだろ。
そしてこの映画、河原崎長十郎をはじめ前進座という劇団の役者が占めているそうで、前進座というのは旧来の歌舞伎から脱した新しい歌舞伎を目指した劇団だったらしい。
ほら、こういう新しい試みも山中貞雄好みっぽい。いろいろつながってきた。

河内山宗春が実在した江戸時代末期と、講談や歌舞伎として河内山宗俊が描かれた明治時代は、そんなに遠くないように思えるけど、実は半世紀近くも間がある。
この映画は昭和11年で、明治時代とそれほど遠くない感じもするけど、これまた半世紀くらい離れている。
そしてその映画を、これまた半世紀以上経て我々が観て喜んでいる。
これって凄いことだと思うんだ。
こんなもって回った言い方をして「凄い」しか言ってないのもナンだな。「映画は時代も国境も超えない」という持論と反するしね。

でも多分、公開当時の観客と今の観客とでは、確実に受け止め方も違うと思うんですよ。

河内山宗俊に関する知識も違うかもしれないし(本当は丹下左膳同様パロディーだったかもしれない)、世相を反映した何かが描かれているのかもしれない。
第一、登場人物達の気持ちの理解度が、当時の観客と今の観客とでは違うと思う。
(少なくとも「恋仲の男女の心中」という概念は、今時皮膚感覚では理解できないと思う)

それでも、今こそこの映画をリメイクすべきだと主張したい。

それは、若くて綺麗なお嬢さんをオッサンが助ける『カリオストロ』的物語が普遍的な物語だから、というわけではない。
西山洋市の言葉を借りれば、「若者がモラトリアムから脱する物語」だからだ。
ダメなオッサン達が、ダメになっていく若者を身体を張って修正してやる物語だからだ。
これこそ現代に必要な物語だと思うのだ。
今の時代、そんな立派な大人が一人でもいるだろうか?
あ、一人いた。クリント・イーストウッド。

(1936年 日活)

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