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あの手この手




監督:市川崑/ラピュタ阿佐ヶ谷/★4(70点)本家

昭和27年当時、先進的すぎる「あっけらかん」。レベル高すぎ。
ネタバレになりますが、これはもう、市川崑・和田夏十版『夫婦善哉』なのです。

劇中「せめて男女平等を主張すべきよ」という台詞がありますが、これが尻に敷かれた男性に向けた言葉だなんてねえ、早すぎる。25年後、いや、半世紀後の今でも新しい台詞ですよ。

この映画の制作は昭和27年。戦争が終わってまだ7年。
日本最強映画『七人の侍』『ゴジラ』が昭和29年。小津の『東京物語』だって昭和28年。
肝心の『夫婦善哉』の映画化に至っては昭和30年。
それらより早く「奥さん県議に出馬する。頭オカシイ」とか言ってるんですよ。先進的すぎる。
ついでに言うと、アコがお手伝いとして家庭内で台頭していく様がアップと声だけで進行しますが、これはヒッチコックが『ダイヤルMを廻せ!』でもやってる手法なんですけど1954年ですよ。ヒッチ先生より2年も早い。びっくりした。

さらにこの映画、一見すると「一体なんだったんだ?」と思うような「あっけらかん」さ加減が、すごくレベルが高いと思うのです。
だって普通、志摩に帰ってめでたしめでたしだろうがよ。なんだよ「出てってよかった」みたいな先が読めない展開は。

例えば、アコは嘘ばっかついています。
そんな彼女が「中年の魅力が分かったみたい」と、鼻をこすりながら言います。
鼻をこするのは照れ隠しです。
要するに「本気」の言葉なのです。
大胆な展開の中で、なんという繊細さ。びっくりした。

だからと言って、格別メソメソしたり心の奥深くに踏み込まない「あっけらかん」。
誰一人独白せず、当人の心情は他人からは「片鱗」しか分からない描写。

おそらく、他人の心の奥深くに踏み込まないのは、「人生相談」という設定が関わっていると思うのです。
「自分のことを他人に相談するなんて変わった奴もいるもんだ」といった台詞が出てきますが、この映画、他人が『あの手この手』をろうしたりとやかく言ったところで、結局「自分のことは自分の問題」ということを言ってる気がします。
だって、他人からどう見えようと、伊藤雄之助夫妻は幸せそうじゃないか。
『夫婦善哉』より『夫婦善哉』(<なんだそれ?)。

(1952年 大映)

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