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悪夢探偵2




監督:塚本晋也/渋谷シネパレス/★4(70点)
(本家/公式サイト

塚本晋也の『回路』。黒沢清と似ているようで対照的。対照的なようで似ている。
前作ではhitomiさんが散々なことしてくれて、今となっては話よりも何よりも「hitomi下手だったな」という印象しか残っていない『悪夢探偵』の第二弾。
やっぱり役者が落ち着くと映画がシャンとするね。
光石研と市川実和子がいるだけで不穏な空気が漂ってくる(笑)

お断りしておきますが、ここから先、本作を観て改めて【黒沢清】と対照的でありながら類似性が高い印象を受けた、という根拠のない個人的な感想を延々述べます。

単館上映の多い“作家”である点。ホラー手法を得手としている点。
すごーく大きな括りでは“同類”に見える監督達だと思うのです。
中でも本作は至極まっとうなホラーに仕上がっていて、黒沢清自身が『回路』について言っている「Jホラーと呼ばれるジャンルの中でやれることを全部やった」という感覚に似ているんじゃないかと思う。

ところが両者の映像は対照的で、静謐な黒沢清に対し手持ちカメラをブン回す塚本晋也。
受ける印象も“無機質”と“肉感的”と大いに違う。
第三者と当事者の視点の違いと言ってもいいかもしれない(実際、本作は見た目カメラと顔アップの切り返しが多い)。

ところが、描こうとするテーマの多くは類似している。共に「破壊と再生」。
正確には、「破壊」の塚本晋也に「崩壊」の黒沢清、能動的と受動的の違いはあるんですが。

ところがところが、もう一歩踏み込んでみると“壊す対象”が少し違う。
「この世界は不安定である」ことを描き続ける黒沢清は、社会や家族といった“枠組(システム)”の崩壊を描こうとする。
一方、「都市と肉体」を描き続ける(最近は肉体の内面=精神面に傾倒している)塚本晋也は、肉体や精神といった“人間”の破壊を描こうとする。

私がこうした思案にふけるきっかけは、「生きるって怖いこと。」この台詞だった。
「この世界は不安定である」ことと大変似た感情を抱きやすい。でも微妙に違う。
「生きるって怖い」という台詞は、時に破壊(暴力)衝動を爆発させる塚本晋也映画の、あるいは塚本晋也の思想の、根底を形成する言葉かもしれないとさえ思う。

市川実和子がハンバーグを作るシーンがやたら長いのですが、「生きるって怖い」という台詞を踏まえると、すごく意味深いシーンに思えてくるのです。
こんな怖い世界に産み落とした者に対する“恨み”からの“和解”あるいは“理解”。そして感謝。
破壊と再生の「再生」が描写されたいいシーンに思えるのです。

2008年12月20日公開(2008年 日)

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