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おくりびと




監督:滝田洋二郎/新宿ピカデリー/★4(70点)本家公式サイト

ミエミエの雑なストーリーを「題材」「大人のキャラクター造形」「役者の貫祿」がフォローした秀作
最近じゃ東京国際映画祭と並ぶ「世界信用できない二大映画祭」になってしまったと私は思っているモントリオール受賞作ということと、「本当はこの人下手じゃね?」と思っている滝田洋二郎ということで食指が動かなかったのですが、モックンということで劇場に足を運びました。

あの香川照行に「本木さんの役者としてのテンションの高さ、ポテンシャルの高さを目標にしていた」と言わしめるモックン。
その納棺師としての所作はもちろんチェリストとしての所作も堂に入っていて、なるほどポテンシャルが高い。何をやってもいちいち絵になるし美しい。モックンかっこいい!

これ重要なポイントで、納棺師の所作が美しくないとこの映画が台無しになる危険性があったと思うのです。
滝田洋二郎は『陰陽師』でも所作の美しい男を主人公にしていますが(エンディングテロップは本作と全く同じことをやっている)、ストーリー上それほど必然性があったとは思えない『陰陽師』比べ、本作では映画の根幹を支えている気がします。

このまま勢いで役者について語りますが、貫祿なんですよ、山崎努とか余貴美子とか。
吉行和子に笹野高史、加えて杉本哲太が出てきた時には「すごい安定感だ!」と感心した。「松竹映画か!」とも思ったよ。あ、松竹映画だ。

だからね、皆さんヒロスエのこと悪く言いますけど、いや勢いで余談になるんですが、周りが良すぎたんですよ。だって山田辰夫だよ。峰岸徹が「私は宇宙だ!」って言うんだよ(<言ってない)。そんなにヒロスエ悪く言うなよ。ピロQさんに成り代わって言うけど、俺のヒロスエ悪く言うな!良かったじゃないか、あの鎖骨の辺りの色気とか。『秘密』の時もそうだったけど、日活ロマンポルノ出身・滝田洋二郎はヒロスエ脱がせたいんだよ!「やだ、こんな所で恥ずかしい」とか言わせたいんだよ!その一心で(他に適した女優は大勢いたろうけど)キャスティングしたんだよ!許してやってくれよ〜。

ああ、すいません。ちょっと興奮して、ずいぶん余談が長くなってしまいました。

正直ストーリーはミエミエで粗いというかベタというか、「松竹映画か!」ってくらいのもんなんですよ(だから松竹映画だよ)。
あのねえ、滝田洋二郎って細かい所が雑な気がするんですよ。

また余談なんですけどね、こないだ調べて分かったんだけど、1980年代に監督デビューした撮影所出身者(崩壊した撮影所システム最後の助監督あがり)って、根岸吉太郎にしても崔洋一にしても、細かい所が雑というか、絵作りが古臭いというか、金子修介以外はたいがいそんな気がするんですよ。滝田洋二郎の師匠なんて山本晋也だからね。

でも、その粗さを上回り、粗さを感じさせない(忘れさせる)風格が、この映画には備わっていたと思うのです。
それは、先に述べた「役者の貫祿」や、観た者誰もが何かしら考えさせられる秀逸な「題材」、これから述べる「キャラクターが大人」だったことが支えだったのではないかと考えるのです。

こうした「見知らぬ職業物」は、よく「若者主人公」にしがちなんですが(ベテランと新米という構図は踏襲していますが)、挫折を知った一人前の大人の新たなる旅立ちとしている点は、作品の大きな安定要素であったように思えます。
もちろん若者の成長物語という手もあったでしょうが、それだと「珍しい職業紹介」の比重が大きくなり、その先の「死」を巡る物語に辿り着くまで多大な時間と無理が生じたように思えます。たぶん。

「夢と思っていたものが夢じゃないと気がついた」ところからスタートすることで、「男が天職を知る物語」という切り取り方も可能で、それによって、その「職」を巡る様々なエピソードが単なる「職業紹介」とは違う深みをもたらしているように思えるのです。

冒頭、真っ白な雪景色の中から車のヘッドライトが浮かび上がる画面は、真っ白=無(死)の中へ旅立つ人の水先案内人である納棺師を象徴しているのかもしれません。

でも、ちゃんと撮れてねえよな、あの画面。
やっぱりさあ、雑なんだよ。
石のくだりとかさあ、ちょっとやりすぎ。
いや「いしぶみ」はおじゃる丸でもやってるエピソードなんだけどさ。

余談ばかりなのにさらに余談

聞いた話では、納棺師という職業に元々興味を持ったのはモックン自身だったそうで、小泉今日子様に「自分もたいがい出無精だけどこんな出無精な人見たことない」と言われてしまうものぐさモックンが積極的に企画を進めるはずもなく、近しい人に「納棺師って興味深いよね」なんてことを話して十数年、巡り巡ってやっと今回の企画に辿り着いたそうだ。

2008年9月13日公開(2008年 TBS=松竹)

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